ストライキでフランスの経済に大打撃

02.06.2016

Photo: boston.com

 

例年なら観光客で賑わうはずのフランスが、労働法改正に反対する各地のストライキ騒動で混乱を極めているが、このままいけば観光産業が大打撃を受けることになりかねない。背景には10%を越えるフランスの失業率がある。オーランド大統領が事態を改善するとして推進する雇用法改革がEU2の規模の組合・労働者の猛反対を受けている。

 

10%の成長を遂げている英国と対照的に、2008年の金融危機の影響から脱しきれないフランス。経済改革を政策トップに掲げるオーランド大統領は危機を乗り切り復興を遂げたい。ストライキの影響を甘く見ていたオランド大統領だったがガソリンが底をつき配給制度に頼らざるを得ない国内の混乱は想定外だった。

 

 

サッカーの欧州選手権(Euro2016)を前に英国からの250万人に及ぶスポーツファンが競技場へと向かうこの季節は混乱に火を注ぐ結果となっている。またフランスの観光産業にとってもストライキの影響で手痛い経済損失となる恐れがある。オランド大統領はしかし、ストライキの混乱より昨年のパリ同時テロを警戒する。ストライキの混乱に乗じたテロ攻撃の可能性があるからだ。そのため緊急に9万人の警察官、軍隊、民間の治安維持部隊が各地に派遣された。

 

フランスのストライキは組織力にものをいわせて全国的に行われる。ロジステイックス労働者にエアライン乗務員、航空管制官、鉄道従業員らが加わるため、物流が完全に滞る。ガソリンは国内製油所の過半数が操業を停止したためスタンドから姿を消し、配給制となったほか鉄道網、地下鉄もストライキに入った。

 

 

労働法改正に対する反対運動の中心はフランス労働連盟だが学生も加わり、一部の穏健派(フランス民主党労働連盟)を除く、大多数の労働者が加わった大規模なものとなった。ストライキの経済損失は10%を越えるとみられるが、一層の悪化を招く結果となった。

 

労働法の改正条項は、

 

・週35時間の労働時間を最大46時間まで延長可能にする

・企業の給与削減を容易にする

・従業員解雇条件の緩和

・特別休暇の制限

 

など。いずれも労働条件の悪化につながるため、労働者の反対は自然な流れである。雇用が厳しい中で企業に有利な法改正を目指した政権は支持基盤を失い、政府が弱体化することは避けられない。