Photo: The sovereign investor
欧州中央銀行(ECB)は2月に検討をしていた500ユーロ紙幣の廃止を、4日に公式決定した。欧州だけでなく、世界的に高額紙幣の廃止、キャシュレス化の方向に向かっている。民間レベルでは、ブロックチェーン技術の応用でデジタル通過による株式の取引や金融取引などが始まっており、政府や中央銀行の間でも、全貨幣のデジタル化への取組みが進んでいる。中でも、米国と中国は積極的にビットコインのような独自のデジタルコインの発行と使用を検討している。
通貨のデジタル化
ブロックチェーン技術サミットと言われている「コンセンサス(Consensus)2016」が5月2~4日ニューヨークで開催された。ビットコインやブロックチェーン技術を使ってのスタートアップを支援している投資会社のDigital Currency Group(DCG)が主催で、顧問には米100ドル札の廃止や通貨のデジタル化を推進しているローレンス・サマーズ元財務長官がいる。 DCGは政府との関わりがあるため、動向が注目の的となっている。
会議で、DCGの創業者件最高経営責任者のBarry Silbert氏は、『米FRBと中国人民銀行は通貨のデジタル化に取り組む方向にある。ドルコインやRMBコインといったものを発行することになるであろう。中央銀行が発行するデジタルコインはビットコインとは明確な違いをもつことになる』と指摘している。つまり、ビットコインに取って代って、中央銀行が発行するデジタル通貨が主要となることを示唆している。
会議に参加したサマーズ氏も、『ビットコインなどのデジタル通貨に関する国際送金の法整備がこれから行われ、ビットコインの将来性は明るくない』と述べている。
政府の意向を隠すことなく、Silbert氏によると、デジタル通貨の発行は中央銀行の都合に合わせて発行され、デジタル通貨の全ての使用者の「お金の動き」を政府は追跡することができるようになる。デジタル通貨による利便性を引き換えに、個人のプライバシーと自由がなくなる。
中央銀行の思惑
中央銀行にとって最大のメリットは、デジタル通貨が中央銀行の管理下にあるため、マネーサプライを操作できることである。マイナス金利やヘリコプター・マネーといった金融政策の導入が容易となり、タンス預金や銀行の取り付け騒ぎがなくなる。金融危機リスクが国民の負担で処理されることになる。