トランプが警告していたブリュッセルのテロ

23.03.2016

Photo: sputnik

 

322日、国際都市ブリュッセルの空港と地下鉄で連続テロが起き、34人以上が犠牲となり、負傷者18人以上を出す大惨事となった。事故後ベルギー政府はテロ警戒水準を最高レベル(レベル4)に引き上げ、公共交通機関を全面停止して厳戒態勢に入った。

 

共和党指名争いのトップを走るドナルド・トランプがブリュッセルでテロが起きることを2カ月前に彼一流の過激な表現で警告していた。詳しくはYouTubeにアップされている動画“Donald Trump: Brussels-it’s like living in a Hell Hole” (下)を参照。

 

トランプ氏はブリュッセルの都市部にあるイスラム勢力のゲットーが無法地帯(近づいてはならない”NO-GO zone”(注1)と呼ばれる警察も取り締まることが困難な地区)モーレンベークを拠点として、ISがシリアで行っているような無差別テロ攻撃を起こす危険性が高まったことを懸念していた。

 

(注1)米国には市民が勝手に判断する”NO-GO zone”が少なくない。例えばシカゴなど都市部では黒人やヒスパニックが集まる南地区であることが多い。明確に区別され危険地域を市民は避けるため一般市民が紛れ込んで犠牲になることは少ない。また警察や消防署が立ち入れないわけではない。

 

3月18日に逮捕されたパリテロ事件の犯人の一人であるアブデスラム容疑者(注2)をこのイスラムゲットーは4カ月も英雄扱いで匿っていた。ベルギーが欧州のISテロ組織の中心的存在であり多数のテロリストの温床であった。匿った住民たちは警察に非協力的でパリテロ事件の捜査という名目なしでは警察も、消防も立ち入れない無法地帯が国際都市に存在している。

 

(注2)パリ同時テロの実行犯の10人のうち9名は死亡していて、アブデスラム容疑者が最後の一人である。しかしオランド大統領はパリテロが組織的犯行で、関わったテロリストは想像以上に多いとしている。捜査はそのため継続されることとなっている。

 

 

ブリュッセル空港でアブデスラム容疑者らが狙ったのはアメリカン航空のカウンターであったが、9/11でボストンから飛び立ったアメリカン航空のボーイング機はWTCに激突したことでも、米国の象徴として反米テロの標的となった。図らずもトランプ氏が公言する米国人を狙うイスラム過激派のイメージが欧州で定着することになりかねない。

 

今回の事件がパリテロ事件の後、強められた警戒の中で起きたことはテロ攻撃が狙うソフトターゲットは絞り込みが困難で、組織が拠点に隠れて身を隠せば事前に盗聴で察知することができない。欧州の各地に散在するこうしたイスラム移民のゲットーへの警察の力が及ばないことを逆手にとって、ISテロリストは一般人を装って住民に守られ、周りに溶け込んで捜査の手を逃れる。

 

表現が過激なため反撥を買うことが多いが、トランプ氏はこうしたテロリストたちが米国内に隠れ家を作らせないためには不法移民を排除すれば良いと訴える。移民であっても米国民となった正式な手続きを経た移民たちとテロリストを含む不法移民を区別しようという主張は、パリテロ事件、今回のブリュッセル事件によって妥当性を持つこととなった。