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世界4位の総資産を持つドイツ銀行の破綻危機は、2013年から懸念されてきた。世界最大のデリバティブを保有していることから、破綻すればリーマン・ショック以上の金融危機、世界規模の恐慌を引き起こす可能性が高いと考えられる。そのため今回明らかとなった、ドイツ銀行によるデリバティブの一部の売却は注目される。
2015年には不良債権の増加、紛失決済、金利や為替の不正操作による損害賠償、ドイツ経済の低迷などによる業績悪化、そうして世界最大のデリバティブの保有による損失拡大のリスクで経営破綻は避けられないと示唆された。CEOの2回の交代、海外業務の縮小、事業再編、大規模なリストラを実施したが、2016年に入ってドイツ銀行の株価は一時4割以上も下落した。2015年度決算は過去最大の8,500億ドルの純損益となり、末期的な状態にある。
75兆ドルのデリバティブ
ドイツ銀行のデリバティブ取引の残高は75兆ドルにのぼる。ドイツのGDPの約20倍、ユーロ圏GDPの5倍、世界各国の総GDPの66兆ドルを上回る額である。
そのデリバティブを巡り、ドイツ銀行は保有する未決済のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS:借り手のデフォルト、債務不履行に備える、信用リスクに対して、保険の役割を果たす契約)で構成されているポートフォリオの約3分の2を既に2015年中に売却したことが明らかになり、残りの3分の1の売却は現在JPモルガン・チェース、ゴールドマン・サックスとシティグループの米銀3行と交渉中である。CDSポートフォリオの想定元本総額は約1.1兆ドルとされ、昨年売却した部分も3銀行を含む複数の銀行が購入している。
投資家のウォーレンバフェットは、デリバティブのことを金融大量破壊兵器と呼んでいる。数多くの複雑な金融商品(デリバティブ)は次第に姿を変え、その毒性が明らかとなる出来事が起きるまで増殖を続けると提唱してきた。2011年には、大手銀行が保有している数兆ドルのデリバティブは金融システム全体に破壊的であり、そのリスクは事実上管理不能であると指摘した。
ドイツ銀行が保有しているデリバティブの中身を全て確認することは困難なため、何時爆発するかが分からない爆弾を抱えているようなものである。思い出すのが、2008年のリーマン・ブラザーズの破綻の際、リーマンとのデリバティブ取引(約100万件)を交わしていた8,000以上の銀行、ヘッジファンド、投資家への連鎖的損失である。ドイツ銀行によるCDSポートフォリオの一部の売却は、破綻危機の前兆にみえる。