Photo: The Event CHRONICLE
オバマ大統領は20日にサウジアラビアを訪問したが、それは国王や王室関係閣僚の出向かいがない、地元メディアの報道がない、両国の関係悪化を表したものであった。9/11の情報公開を巡り、関係悪化を改善するための訪問であったはずだが、サルマーン国王は湾岸協力会議の首脳との会合を優先、オバマ大統領との会合を後回しするといった軽視した扱いをしたのである。
米国外交政策の失敗
英フィナンシャル・タイムズ紙は20日に、米国とサウジアラビアの同盟関係の悪化についての記事を掲載している。そのなかで、米国の中東政策の対立と失敗とそれに対する不満が戦略関係悪化の根源にあると指摘している。イラク戦争後、米国がイラクでシーア派政権を成立させたこと、2011年にはエジプトで起きた『アラブの春』への米国関与で、当時のムバラク政権を転覆(同盟国への裏切り)、イランとの核合意、シリア、レバノン、イェメンにおけるイランの影響力拡大を阻止できないなどオバマ政権の外交政策の失敗が原因としている。米国の安全保障を守ってくれる、頼れる同盟国としての信頼が疑われている。
さらに、過激派テロ組織のISISの創設は、米国外交政策の失敗に対応した政策であったことをサウジアラビア政府は認めている。旧サウード・アル・ファイサル外務大臣は2014年にも、『米国が支持するイラクのシーア派政権に対して、ISISはサウジアラビア(スンニ派)の対応策である』と米国ケリー国務長官に述べていたことをフィナンシャル・タイムズ紙は指摘した。
ペトロダラー体制の崩壊
テロ組織アルカーイダの出現と9/11テロ事件は、米国が中東で軍事介入を可能とした。中東におけるイランの勢力拡大を阻止すると同時にペトロダラー体制を維持するためであった。しかし、米国の影響力と軍事力の弱体化、政策の失敗により、サウジアラビアはISISという代理軍隊を通して中東におけるイランの影響力を阻止しようとしたのである。ISISは米国を見限ったサウジアラビアの国家戦略であると共に、ドル基軸通貨を支えるペトロダラー体制の崩壊の始まりでもある。