各国中央銀行の金保有量の増加

06.06.2016

Photo: americanbullion.com

 

 ワールド・ゴールド・カウンシル(金の世界的な調査機関:WGC)の2016年の1~3月(第1四半期)の発表によると、世界の金需要は1289.8トンで、前年同期から21%増であった。金の国際価格も今年に入って2割も上昇している。投資家や個人だけでなく、各国中央銀行による金購入量も2016になって、記録的高水準に達している。

 

 リーマン・ショック直後から各国中央銀行の金購入は増加傾向にある。経済バブルの2000~2007年には中央銀行は3,956トンの金が売却したが、その傾向は2008年に購入に変わった。2008~2015年には2,657トンの金が購入され、明らかに、中央銀行の金の長期的売買動向が変わったのである。中央銀行の金購入量は2009年には世界の金供給量の2%であったのが、2015年には14%まで拡大している。金を積極的に購入している主な中央銀行は、ロシア(46%)、中国(35%)、カザフスタン(7%)である。

 

Source: Bullion Management Group

 

 マイナス金利政策、経済動向や金融政策の先行き不透明感、国債や株式への投資環境の悪化、通貨価値の低下、不換紙幣に対する信用の低下といった理由で投資家や個人は安全資産であり、安全な正貨である金を保有する動きとなっている。

 

 

 中央銀行の場合は、通貨戦争による自国通貨価値の低下を回避するためもあるが、金購入の主な理由はドル離れである。世界各国の中央銀行は保有している米国債を売却して、金を購入している。金の購入が高水準であると同時に米国債の売却も高水準である。2015年に2,260億ドル(1978年以来の最大の規模)の米国債が売却されたが、すでに1~3月期でその半分の1,230億ドルの米国債が売却されている。今後、米国債を売却し、金を購入するといったこの傾向は加速していくと思われる。