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ニューヨークにある全米証券業協会(NASDAQ)本部で世界の金融機関の経営幹部100人以上の機密会合(4月11日)が開かれた。将来金融取引を根本的に変えると言われている、ブロックチェーン(blockchain)技術の応用についての業界における意見交換の会合と思われていたが、実際は多業界を含む大規模なブロックチェーンのテストランであったことが5月になって明らかとなった。ブロックチェーン技術により、キャッシュレス化が急速に進むことになる。
ブロックチェーンとは何か
ブロックチェーンとは、ビットコインなどの分散型暗号通貨を支える中心的技術である。ビットコインの通貨の取引の記録を「ブロック」にまとめてあり、「チェーン」のように順次追加していく仕組みからブロックチェーンと呼ばれている。取引記録のデータベースは一箇所に保管されているのではなく、ビットコインのネットワークに参加しているコンピュータに分散されて保管されている。
チェーン社開発のブロックチェーン
4月にブロックチェーン技術の開発とテストランを行ったのは、サンフランシスコを拠点とするベンチャー企業のチェーン社である。すでに、ブロックチェイン・システムの導入で、NASDAQでの未上場株の証券取引を12月に成功している。チェーン社には、NASDAQ、シティバンク、フィデリティ証券、VISA、三菱UFGファナシャル・グループなどが開発資金を提供している。
これまで、仮装通貨の「ビットコイン」でブロックチェーンが利用されたが、今回は現存する資産(例えばギフトカード、預金、シンジケート・ローンなどの実物資産)がデジタル化され、即座に取引決済(例えば買い物の支払い、株の売買、保険の支払いや受け取りなど)に応用された。数日掛かる国際取引決済も数秒で達成できることになる。現在「ビットコイン」での取引処理は1秒間で6~7取引であるのに対して、チェーン社開発のブロックチェーンでは、1秒間で数万件の取引決済の処理が可能となり、導入によって決済時間の短縮とコストの削減が期待されると言われている。
Source: Chain
上のイメージに示されるようにチェイン社のブロックチェイン・システムは"Open Standard"と呼ばれるオープンソースプラットフォームで提供されるので、参加企業の参入が容易で拡張性に富むことが特徴である。
だが、ブロックチェーン技術が進歩するにつれて、キャシュレス化が加速することになる。資産・通貨の動きのビッグデータ化が社会に与える影響は十分に議論されないまま実用化が始まろうとしている。