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外国人に指紋入力を強要したとして国際的に評判を落とした日本だが、汚名挽回とばかりに政府は今年の夏、外国人観光客を対象に指紋で身元を確認して買い物ができるシステムの実験を行う。政府はこの認証システムで旅行客が現金やクレジットカードを所持せずに安全に買い物ができるとしているが、その背景にはビッグデータ活用がある。
外国人観光客は空港で身元、クレジットカード情報と指紋を登録すると買い物に免税措置が施され指紋を入力するだけで買い物ができる。また外国人旅行者のホテル・旅館への宿泊に対しては旅券の提示(注1)が求められるが、このシステムによって指紋認証で済むことになる(The Japan Times)。
2016年夏の実験には箱根、鎌倉など人気スポットの計300箇所のお土産や、レストラン、ホテルなどが参加する。政府はその後2017年春までに参加店舗を拡充し名古屋から東北に展開し、2020年までに東京を含む全国規模にする。政府は2020年までに外国人観光客を年間4000万人に増やす計画である。
Photo: Japan Times
観光客の買い物情報はビッグデータとして活用され観光戦略の見直しに役立てるとしているが、個人情報の最たるものである指紋入力に反撥する観光客も出てくるので、個人情報の漏洩など問題が起こらないとも限らない。
国内向けにも同様のシステムで銀行やテーマパークでの本人確認に使う計画も進行中である。実際にはハウステンボスで30店舗での指紋認証実験が行われた。体験した客の意見では財布を取り出す必要がないため、子供連れの時には便利だという。銀行側も身元を偽った詐欺などの犯罪予防につながるとして歓迎している。
観光で訪れた国で旅券審査の際に指紋を要求されたらどう感じるのだろうか。ビッグデータの管理方法や利用について納得しなければ不快な体験になることは間違いない。通帳やカードなしにATMが使えるようになれば、指紋情報を盗み出して悪用することは容易である。ビッグデータの恩恵を受けるのは銀行であるが諸刃の刃になる危険性が避けられない。至便性とリスクが共存する時代がもうすぐ始まろうとしている。