市場混乱を鎮静化するために、追加流動性供給として、ECBは24日に3992億ユーロ(約45兆円)の資金を金融機関に提供、イングランド銀行も30億ユーロを提供、2008年のリーマン・ショック後の銀行救済と同額の2500億ポンドの緊急支援を提供する用意があると発表した。
しかし、欧州の金融機関は、去年からエネルギ関連や新興国関連の不良債権の増加、金利や為替の不正操作による巨額な罰金支払い、訴訟の和解金の支払い、世界経済や中国経済の低迷、マイナス金利などによる収益性と資本力の低下で深刻な事態が懸念されてきた。
欧州銀行株価の過去52週間の推移をみると、イタリアのウニクレーディトが約70%、英バークレイズとロイヤル・バンク・オブ・スコットランドは60%弱、ドイツ銀行は56%、クレディ・スイスは54%下落している。去年から低迷していた欧州銀行株に拍車をかけたのが今回の英EU離脱である。もはや、欧州主要銀行の破綻危機が避けられない状況になったといえる。
イタリアの銀行救済
欧州の中で、金融機関の破綻危機が高いのがイタリア、スペインの銀行とドイツ銀行である。イタリアの銀行の不良債権額は3,600億ユーロ、貸出の18.1%と高い。そのため、EU金融システムのアキレス腱とも言われてきた。4月には、不良債権の処理を行うための資金提供と不良債権の購入の役割を担う銀行救済基金「アトランテ」を設立した。しかし、金融機関から集められた元手は42.5億ユーロで、不良債権処理には不十分な規模である。
そのためか、イタリア政府は銀行救済に400億ユーロの公的資金注入の検討を始めているが、今年から発動している「ベイルイン」制度下で実施が可能となるかは未定である。
銀行の再生・破綻処理の際の「ベイルイン」制度下では、救済資金は銀行の株主や劣後債の保有者、預金者が負担することになっている。イタリアでは多くの年金生活受給者が保有しているため、社会問題に発展することは避けられない。そのため、イタリア政府は「ベイルイン」制度の適用除外を求めているが、現EU法 とECB条約ではそれも不可能となる。