金・銀価格の不正操作を認めたドイツ銀行

09.04.2016

Photo: bloomberg

 

  金・銀等の貴金属取引における価格の不正操作に関与したとして、ドイツ銀行、バンク・オブ・ノバ・スコシア、HSBC、UBS、バークレイズ、ソシエテ・ジェネラルなどの銀行に対する民事訴訟に、ドイツ銀行は13日単独に原告との和解案に合意を成立させた。不正操作を認め賠償金額の交渉を進めているだけでなく、司法取引で共犯銀行の情報提供にも合意したことで、長年疑いが掛けられていた銀行「カルテル」による金・銀価格の不正操作の実態が明らかとなると思われる。

 

 金・銀取引はドル建て決済で、ロンドン貴金属市場協会(LBMA)とニューヨーク商品取引所(COMEX)での値決めで取引されている。「ゴールド・フィキシング」(金の価値決め)と「シルバー・フィキシング」(銀の価値決め)は各市場を形成している加盟銀行によって毎日二回、1オンスをベンチマークに決められ、それが世界での取引価格となる。本来は需要と供給を基準に決まる価格であるが、加盟銀行による価格の不正操作は約15年前から投資家の間では強い疑いがあった。

 

 今回和解に持ち込んだ訴訟は、2014年にニューヨーク、マンハッタン連邦地裁に投資家による民事訴訟である。毎営業日の金・銀値決めの立場を利用し、不正な利益を得たほか、市場の他の投資家の利益を損ねたとして、銀行を提訴したのである。原告の訴訟によると、年間300億ドル相当の現物の銀とペイパー先物銀商品の価格の不正操作を訴えたものである。

 

 

 同原告による金価格の不正操作による民事訴訟についても、ドイツ銀行は14日に和解の申し立てを行っていることを発表した。金現物、金先物オプションやデリバティブ価格が訴訟対象銀行により協力体制で不正操作を行ってきたことをドイツ銀行は認めたことになる。

 

 

 ドイツ銀行が金・銀価格操作の訴訟案件で和解に至ったことで、15日にカナダの投資家たちが新たな集団民事訴訟を起こした。原告は1999~2014年の15年間、金・銀先物商品の投資に関わった全てのカナダ人を代表しての訴訟で、20億ドルの損害賠償を求めている。

 

 

 ドイツ銀行が金・銀の価格操作を認めたことで、今後は世界各国で訴訟を起こされる可能性が高い。銀行間の不正操作の仕組み、中央銀行の関与などの実態が明らかになること、金・銀の需要と供給による適切な価格の値決めのメカニズムの正常化が強く求められる。