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欧州になだれ込んだ難民たちは保護を求める真の難民なのか、欧州を根底から破壊しようとする「トロイの木馬」なのか議論の分かれるところだが、はっきりしているのは「欧州の価値」が葬り去られ用としている事実である。欧州が守ってきた尊い規律が難民たちによって存続の危機に瀕している。実際、英国と欧州の国境警備当局は、難民による混乱は第二次世界後最大の規模だとしている。
欧州対外国境管理協力機関、フロンテックス(注1)によれば2015年に182万人の難民が不法に欧州に渡り、社会危機が収まらなければ欧州の安全保障に深刻な打撃を与えるとしている。
(注1)EUの国境警備の専門機関。非合法移民の帽子、取り締まり、送還、管理に貢献する組織。通常は空港で旅券の追跡調査により身元の確認とお正当性が立証できるまでは入国できない建前であった。
EUは欧州諸国が一体であるという理念のもとに集合した諸国の連合であるが、国の都合でバラバラな行動をとれば、その理念が崩壊しEUそのものが消滅する危険性がある。2015年に欧州から英国への移住希望者は例70%も増大した原因はアルバニアの難民がイタリアとギリシャ国籍を、ウクライナ国籍の難民がポーランド国籍を装って英国入国を試みるためである。その他にシリア、イラン、中国国籍を持つ難民が英国を目指す。
入国が査証不要のシェンゲン協定加入国の間でも書類の偽造が横行している背景には一次入国の後で難民たちが移動を続けるからである。2015年にEU加盟国で見つかった偽造書類は5,409件に上る。国境警備の当局は不法な難民による騒乱にいますぐ対処しなければ、シェンゲン協定(注2)非加盟国は手の施しようがなくなるとしている。
自国が主権を持てずEUの法律が優先されるため、偽造書類を持つ難民を受け入れなければならない。難民危機で欧州の安全保障と移民システムが崩壊するリスクが高まった。英国税関はイタリアあるいはギリシャ国籍の偽造された移民書類を見つけたとしても、個人情報をたどって確認することができない。犯罪組織がシリア国籍の盗難旅券を使って大量に旅券を偽造しているが、本物と見分けがつかないという。
(注2)国境検査なしに入国できる協定。当初はベルギー、ルクセンブルグ、フランス、オランダ、西ドイツが加盟。将来加盟国を除けば非加盟国は英国のみ。
さらに難民の中に潜んでテロリストが入国することを防ぐ手段がないし、EU内での潜伏先と移動に関する情報を掴むことは不可能である。またブリュッセル連続テロ事件のようにテロリストを匿う住民もいることを警戒しなければならない。難民危機によって欧州の理念が存続の危機にさらされていることは確かなようだ。難民への対応が二極化していることでEUの共同歩調が乱れた。今後の展開によってはEUの分裂に拍車がかかる恐れがある。