Photo: Philosophers Stone
米連邦準備制度理事会(FRB)の緊急特別会合が11, 12, 13日と3回開かれたが、協議内容に関してはなおかつ非公開である。11日には、会合後にイエレン議長はホワイトハウスに呼ばれ、大統領と副大統領が同席するといった異例な会合(*)が開かれた。FRBが緊急特別会合を開く必要となった背景には、欧米の金融機関の業績悪化と高まる破綻リスクがある。
*国家安全保障に関わる重大な件でなければ、国家安全保障上、大統領と副大統領が同席する会合は開かれない。
救済が必要となる米銀行
2008 年のリーマン破綻後の公的資金を使っての銀行救済への批判を受けて、2010年にドッド・フランク・ウォール街改革・消費者保護法が成立された。ドッド・フランク法では、銀行を対象にレゾリューションプラス又はリビング・ウィル(破綻処理計画)の策定を求める規定がある。これは金融機関の破綻リスクがある時に、自ら秩序だって処理・解体するための計画である。同規定は「大きすぎて潰せない銀行」の問題への解決、納税者の負担による銀行救済、ベイル・アウトを無くすことを目的としている。
そのレゾリューションプランに関して, FRBと連邦預金保険公社(FDIC)は、FRBの緊急会合後の13日に、「大きすぎて潰せない」銀行のうち、
バンク・オブ・アメリカ
バンク・オブ・ニューヨーク・メロン
JPモルガン・チェイス
ステート・ストリート
ウェルズ・ファー
が最低要件を満たしていないことを発表。さらに、モルガン・スタンレーとゴールドマン・サックスも連邦倒産法では倒産手続きができないと、レゾリューションプラスが不十分であることをつけ加えた。その他の銀行、バークレイズ、クレディ・スイス、ドイツ銀行とUBSのレゾリューション・プランは現在検討中である。
ほとんどの「大きすぎて潰せない銀行」は破綻処理ができず、次の金融危機の際、ベイル・アウトやベイル・インが必要となる状況にあることを意味する。今回、FRBと FDICが特に注目したのが、銀行の資産流動性が適切なレベルを満たしていないことである。
JP モルガン破綻の脅威
総資産2兆ドル、保有する商品デリバティブ総額51兆ドルの米国最大の銀行であるJPモルガンは、次の金融危機の際、米国の金融システム全体の崩壊を引き起こすと FRBと FDICは指摘する。なぜならば、JPモルガンは米5大銀行のうち、最も連鎖リスクが高いからである。
JPモルガンはドイツ銀行に続き、最も商品デリバティブを保有している銀行である。レバレッジが高いほど、ダフォルト・リスクと他の銀行との結合指数が高く、連鎖リスクは高い。つまり、商品デリバティブ・デフォルトが発生した場合、その影響は他の銀行へと波及し、深刻な場合、銀行破綻が連鎖的に起こる可能性が高いのである。
レゾリューション・プランがドッド・フランク法の最低要件を満たさないことが意味することは、銀行自身が破綻リスクを十分把握していない、破綻の際は破綻処理ができない、1銀行の破綻は連鎖的に他の銀行に波及することである。