Photo: Health News Today
2015年に米国製で200gの人口心臓がイタリアで26歳の青年に移植された。心臓移植を受けても生体拒否反応が出ていたため、唯一の生命維持のためであったが、多くの心臓病を持つ患者にとって未来技術でしかなかった遠隔操作の人工心臓をテルアビブ大学が開発した。バイオニックワールドの扉を開く画期的な治療法になると期待されている。
“Cyborg Cardiac Patch”と呼ばれる開発されたバイオニック人工心臓(Nature Materials(http://www.nature.com/nmat/journal/vaop/ncurrent/full/nmat4590.html)に掲載)はこれまでのもの同様に収縮・拡張して血液ポンプの役割を果たすが、遠隔で制御され必要に応じて薬剤を自動的に投与するもので、いわばサイボーグ技術に分類されるものとなる。
テルアビブ大学の研究グループによればこれまでの研究では人工心臓の細胞組織に有機物が使われていたが必ずしも満足のいく結果は得られていなかったが、今回開発されたバイオニック細胞組織では完全な心臓機能が得られるという。研究グループの提案は人間の心臓細胞組織と一体化した人工組織に電子制御回路を組み合わせてサイボーグ人工心臓パッチを作るもの。
Source: Nature Materials
サイボーグ心臓パッチは患者の心臓の健康状態を常時モニターしてデータを送信する事により、医師が遠隔に診断することが可能になる。センサーが炎症を検出すると必要に応じて抗炎症薬を投入したり、酸素が不足すれば血管形成細胞を作り出す物質を投与したり、緊急措置を簡単に行える。
研究グループはサイボーグパッチの技術を脳細胞と脊髄に応用する研究にも着手している。実際にサイボーグ心臓パッチによる治療がいつ始まるのかは不明だが、人間のサイボーグ化はナノテクノロジーによって実現性が高まった。しかし先進医療と同じく高額であればこの治療法も富裕層に限られる。映画イリジウムで描かれた富裕層の住む宇宙船のように手の届かない技術であるならば意味がない。