ミイラのDNAが明らかにしたアメリカ先住民の起源

04.04.2016

Photo: National Geographic 

 

北米大陸の先住民たちは欧州から持ち込まれた疫病のパンデミックで死滅したとされるが、反論もあり詳細は謎に包まれている。絶滅の真相を探るためアンデス山脈で8,000年間にわたり冷凍保存されていた92体のミイラから取り出されれたDNAが解析(注1)された。研究チームは1,400年代にスペイン人が上陸後に先住民たちが疫病で絶滅した謎に迫った。

 

(注1)ミトコンドリアDNAを用いた遺伝子解析。5,400年前の人類とされるアイスマンのミトコンドリアDNAからコピーを作りDNA塩基配列が解析された結果、ドイツ系欧州先住民であることが確認された。エジプトなどのmイイラのDNA解析にも応用され成果を上げている。

 

研究によって絶滅の様子とともに先住民たちがベーリング海峡を渡った東ベリンジアの起源を持つことも明らかになった。研究によると先住民たちは16,000年前に北米に海岸沿いに入り北米大陸に住みついた。しかし数千年にわたって繁栄していた先住民たちは欧州人が上陸すると急速に絶滅した。

 

オーストラリアの研究チームによれば、驚くべきことに100体近くの先住民のミイラのDNAは現在、北米の住民に引き継がれたものはない、すなわち先住民たちは移住してきた欧州人と接触を持たずに絶滅した。この事実を説明するには欧州人が入植すると、先住民たちは移動せず地理的に隔離されて絶滅したと考えざるをえないため、1400年代のスペイン人の入植に伴って急速に絶滅したことが証明された。

 

今回の研究では500年から8,600年前の先住民のミイラ92体が対象になった。この中には1999年にアルゼンチンで見つかったインカ帝国時代のミイラも含まれている。アルゼンチンのルライラカ山で見つかった10代の少年少女のミイラは500年前に生贄として捧げられた遺体であった。

 

登山家たちによって発見されるまで氷に閉じ込められてミイラは保存されていた。スペイン人が上陸数までピーク時には1200万人の社会を作って暮らしていたインカ人は南アメリカ最後の先住民で、欧州から持ち込まれた疫病で300年で絶滅したと考えられている。インカ人のミイラのほか、ペルー、ボリビア、チリ、メキシコアルゼンチンで見つかっているミイラを加えてDNAを解析することによって、研究チームはベーリング海峡を越えてやってきた先住民たちが北米・南米大陸を移動していく過程を調べるとともに北米人のDNAと比較した。

 

 

Source: Nature

 

その結果、中央アメリカと南アメリカの先住民の絶滅が急速であったため、北米人のDNAは先住民から引き継がれるものはほとんどないこと、25,000年前の東ベリンジア起源であることが明らかになった。16,000年前にベーリング海峡を越えて北米大陸に住みついた。またその一部は海岸沿いに南下して南アメリカに渡り、チリに至ったものと考えられる。

 

 

スペイン人が持ち込んでインカ人を絶滅に追い込んだ疫病には天然痘、麻疹、風疹など複数の病原菌によるものであった。