空港でのフルボデイスキャンの功罪

21.05.2016

Photo: blog.al.com

 

エジプト航空のエアバスが着陸前に地中海に墜落した事件でテロの可能性も浮上している。誰でも自分の乗る飛行機に爆弾を持ち込まれたくないのだが、空港のフルボデイスキャンには抵抗がある人が多い。

 

英国の空港にあるフルボデイスキャン装置に人権擁護団体から抗議の声が上がっている。2009年末の爆弾未遂事件の後、テロ対策として装置が備えられたのは2010年夏のことである。現在、ヒースロー、マンチェスター、バーミンガム空港に設置されている。

 

一般の乗客は問題になるようなものを身につけていなければ気にしないという場合が多いが、問題は測定時のネガパターンを反転すると下の例のように、「ヌード写真」がとられたと同じことになるので、流出すれば個人情報の漏洩になる。

 

 

Source: Cult Nuts

 

もちろん装置の分解能は高速性も考慮してあるので、気にするほど鮮明なものではないが、装置の進歩は著しい。可視光の全身3Dスキャナーは最高速のもので12秒である。今後、高分解能の装置が市販されていけば話は変わってくる。英国の空港ではフルボデイスキャンを拒否できない。悪名高い米国のTSAでは一応拒否はできる。しかしその場合に待っているのは身につけている衣服を脱いでのボデイチェックである。つまり究極の選択となる。またフルボデイスキャンで引っかかった場合も結局は個室に連れて行かれて検査される。

 

旅行者に許される唯一の権利といえば自分と同性の検査官を選ぶ権利だが同性愛者も考慮すれば意味がなくなる。

 

ちなみに英国の空港でフルボデイスキャンを拒否すれば入国できないばかりか国際線に搭乗できなくなる。これまであった18歳未満の免除もなくなった。ルールとして検査官と乗客は仕切られていて検査後の画像は消去される。しかし問題はスキャンされる乗客は無作為に選ぶということである。現在でも出国時の検査で靴を脱いでの検査は無作為抽出で行われているのをご存知だろうか。

 

無作為といっても乱数表で選んだわけでは決してないのでなんらかの判断基準があるはずだが、明らかにされていない。ここで検査官に忠告があある。もしフルボデイスキャンを強要するなら全ての乗客に対して行うべきだろう。時間がかかるからそれはできないというのが現状ではないか。それならもっと高級機機種で高速な装置を導入したらどうだろうか。もちろん購入費用を航空券に上乗せしてはいけない。

 

フルボデイスキャンは体型を測定する光学式のものはすでにモールにも入っているが、空港の装置は着衣も透視するテラヘルツ電磁波を使う。金属は透過しないので影になる。テラヘルツ機器は応用が遅れていたがこういう用途のためか急速に応用が進んでいるので、近い将来には高精度スキャン装置が世の中に出回ることになる。