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主要先進国では次の金融危機の際に、金融機関の再生・破綻処理に「ベイルイン」制度が発動される。今回その「ベイルイン」制度を活用するのは銀行ではなく、2日に顧客口座からビットコインが盗まれた、ビットコイン取引所のビットフィネックス (Bitfinex)である。
ビットフィネックスは盗まれた時価71億ドル相当のビットコイン損失処理の対応策を発表している。同社の保有資産と顧客口座を合わせて、一律に36%の損失が適用されることになる。顧客口座残高の36%が損失処理の負担となる。言い換えれば、ビットコインの「ベイルイン」である。
ビットコイン・ユーザーの損失保証として同社は、ビットコインや現金による補てんではなく、BFXトークン(注1)を発行する予定である。各顧客の口座残高の36%に相当するトークンが提供される。トークンは将来未定の時期に親会社であるiFinexの株式、または現金に交換可能となる引き換えコインのようなものとなる。しかし、このユーザー損失保証も、ビットフィネックスが71億ドルもの損失後の債務状況から建て直しができるかにかかっている。
(注1)世界初の負債対応の暗号通貨となる。この手法でビットフイネックスが再建できるかどうかは、実験的な意味合いがあり、成功すれば仮想通貨とブロックチェーンの流通に大きな弾みがつくとされている。
中国人の動向が鍵となる
2014年のマウントゴックス倒産以降、世界のビットコイン取引状況はドル建てから人民元建てへと大きくシフトした。現在世界の約80%のビットコイン取引量は人民元建てで行われている。今では、ドル建てビットコイン価格は中国で決まる人民元建て価格に左右されているといってよい。
ビットコイン取引市場の発展、取引量の増加と価格の上昇は、個人の国外での投資が規制されている中国で、安全資産を求める中国人による取引の過熱を反映している。また、中国で大規模なビットコイン・マイニング施設があることも、取引量の拡大につながっている。
ビットフィネックス取引所は2014年のマウントゴックス破綻で拡大を遂げ、ドル建てビットコイン取引では50%のシェアを占める世界最大のドル建てビットコイン取引所になるほどに発展を遂げた。多くの中国系ユーザーがいると見られ、今回の損失で中国人顧客の動向が注目される。