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9月のFOMCで追加利上げが見送られた。イエレン議長は年内の追加利上げを示唆しているが、年内に残された2回のFOMC会合で利上げを決定することが困難な状況にある。今回の利上げ見送りでFRBは金利の正常化への機会を失ったことになる。
9月の利上げ見送り
8月25日に米ジャクソン・ホールで開催された年次経済政策シンポジウムでは、イエレン議長(連邦準備制度理事会:FRB)は年内の利上げ、スタンレー・フィッシャー副議長は利上げが2回ある可能性のタカ派コメントを出した。しかし、9月21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合では、追加利上げの見送りを決定した。
経済成長と金利の見通し
今回のFOMC声明文では、2016年の経済成長見通しと長期見通しをそれぞれ6月予想の2.0%から1.8%と下方修正している。コアPCE(個人消費支出)インフレーションは1.7%であるため、「経済成長」は物価上昇によるものであり、生産、投資、消費などの拡大による経済の活動規模の拡張を示すものではない。2016から2019年までは、経済成長の予測は0%と解釈できる。
Source: FOMC
声明文とは正反対に、記者会見ではイエレン議長は強気な経済見通しを述べ、年内の追加利上げの公算が高いと強調したが、明らかにアメリカ経済は低迷傾向にあり、経済成長の下方修正がそのことを反映している。
FF金利も6月予想の0.875% から0.625%と、利上げを示唆しながら30%の下方修正となった。さらに、2017年と2018年の金利見通しを前回の1.625%と2.375%から、それぞれ1.125%と1.875%と30%下方修正した。今回、利上げを見送ったことで、年内の金利目標が達成できないことから、今年を含めて今後3年間の金利の見通しを下方修正したことになる。
年内に利上げの可能性はない
イエレン議長は、「ほとんどの参加者は年内1回の利上げを予想している」と述べている。9月FOMC会合の金利目標を達成するには、年内の利上げは必要不可欠となる。年内開催される FOMC会合は、11月1~2日と12月13~14日の2回。11月の会合は大統領選の一週間前で、金融市場への混乱を避けるため、金利の据え置きを決定すると思われる。
さらに、12月のFOMC会合でも、利上げに踏み切れる状況でもない。会合前に7-9月の第3四半期のGDPが発表される予定で、アメリカ経済の長期的減速を裏付けする統計がでれば、利上げは見送られ、利下げに動く可能性が高くなる。経済の低迷は確実に進んでおり、悪化が加速している。今回の利上げを見送ったことで、FRBは金利の正常化ができない状況をつくってしまったといえる。