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イタリア政府が後押しし民間が主体となって、イタリアの銀行の不良債権処理を行うために4月に救済基金「アトランテ」が設立された。国内の金融システムの信頼回復が期待された。しかし、資金不足となり、「アトランテ」を補うことを目的に7月には「アトランテII」が設立、新たな資金調達を行ってきたが、資金不足の状況は深刻化している。
イタリアの銀行は総額3,600億ユーロの不良債権を抱えている。これは欧州の銀行の不良債権全体の1/3に匹敵する。設立当初から資金不足と言われてきた「アトランテ」の救済基金は42.5億ユーロで、破綻危機にあった地方銀行2行の救済とモンテ・パスキ・デイ・シエナ(モンテ・パスキ)の不良債権の一部の処理に使われた。
民間金融機関や企業から集められた資金の「アトランテ」とは違い、「アトランテII」の救済資金のほとんどは公的金融機関の信託貸付公庫やイタリア郵便局などイタリア政府機関からスタートしている。民間金融機関や企業から集められた資金調達がないのが現状である。集められた資金は1.7億ユーロで、目標の3億ユーロを大幅に下回る。そのほとんど、約1.6億ユーロはモンテ・パスキの不良債権処理に当てられることになっている。モンテ・パスキはその他にも、年内には、事業の縮小、人員削減、不良債権の証券化や売却で不良債権の一部の処理を行う予定ではあるが、不良債権問題の解決には程遠い。
資金不足は深刻
「アトランテI、II」の創立に関わってきた、イタリア基金・預貯金融協会のグゼッティ会長は、10月27日に「アトランテII」の資金不足は深刻な状況にあると指摘している。国内だけでなく、海外の企業からの資金提供はなく、民間側からイタリアの銀行の支援は今後難しい環境にあると説明した。
モンテ・パスキに限らず、他の不良債権で破綻危機にあるイタリアの銀行は、「アトランテ」の資金支援で救済は期待できない事態になった。残された銀行救済策にはベイルイン又は政府による公的資金注入でしか救済の方法は無いことになる。EU規則に反して、イタリアの政府は公的資金による銀行救済を決断、実施するかが問われる。それまで、イタリアの金融システムへの信頼は低下を続け、銀行の破綻危機は深刻化していくことになる。