Photo: emergency outdoors
8月21日にドイツ政府は冷戦以来、初めて緊急事態に備えて国民に食料と水を備蓄するよう呼びかけた。内務省の民間防衛計画は、非常事態の際に公的支援が提供されるまで、市民は少なくとも10日分の食料と水を供せるよう勧告している。その数日後の27日に、ドイツのDie Welt紙は、ドイツ連邦食糧・農業省が国家非常事態の際における食料供給の公営化を合法化する法案を検討していることを伝えている。
連邦食糧・農業省によれば、紛争、大規模停電、パンデミック、放射性物資の放出を伴うテロなどによる食料供給危機が起きた際に、最大80万人に食料を提供するため、ドイツ政府は食糧生産と食料供給を同省の管理下に置くことを推奨している。非常事態には軍の支援で、農場や食品生産設備を所有者から押収、農産物の生産、食品生産と加工、流通までを管理する権限が与えられることになる。同様な法案は、アメリカでも2012年に成立している。
大統領冷による食料供給と食糧生産の公営化
2012年3月、オバマ大統領は大統領冷13603、国家非常事態に備えて「国防資源の準備」(National Defense Resources Preparedness)に署名した。アメリカ全土で、国家非常事態の際に全ての資源(労働、食料、水、エネルギー、産業、その他)を連邦政府の管理下に置くことを合法化する法律である。
オバマ大統領の命令で、農務省は食料や家畜資源、倉庫設備、食糧生産、供給システム、肥料や農業機器などを管理下に置くことができ、国民への食料供給がコントロールされることになる。連邦政府は国防のために、生産者の農地や農作物を差し押さえることができ、食品企業の生産、スーパーやコンビニなどの小売店での販売を管理下に置くことが可能となる。
このような法律は、小規模農家が一掃され、大企業による農業独占やベネズエラのように食料が国民統制のために武器として使われる危険性を秘めている。急遽に法案の成立を求めるドイツの動きは、非常事態が起きる可能性の高さでもある。
チェコやフィンランドでも準備の呼びかかけ
ドイツに続き、チェコ共和国政府とフィンランド政府は大規模テロ攻撃や放射線災害などの最悪の状況に備えて、市民に食料と水の備蓄を求めた。さらに、チェコのミロシュ・ゼマン大統領はイスラムテロ攻撃に備えて、「市民は武装するべき」と国民に呼びかけ、銃の保有規制の緩和に取り組み始めた。
2015年だけでイスラム系移民が110万人を超え、4人に1人は移民となったドイツでは国民の社会不安がつのる一方で、災害など緊急時に対する対策と説明されているが暴動など社会騒乱を念頭に置いていることは明らかである。安全保障と引き換えに食料配給による国家統制が強化されることにもなりかねない。