アルツハイマー型認知症の新薬を開発

07.09.2016

Image: medicalfuturist.com

 

高齢者の増加とともにアルツハイマー型認知症の患者数も比例して増大することが先進国共通の社会問題になりつつある。このほど米国とスイスの薬剤メーカーによって患者に注射するだけで進行を食い止める新薬が開発され、臨床試験により初期症状の患者の認知症治療に有効であると期待されている。

 

臨床試験は安全性確認のためのもので、認知症の改善効果の評価を目的としたものではないが、データ解析の結果、症状の進行を食い止める効果が確認された。これまでの研究から認知症の原因はアミロイドベータという蛋白が蓄積し脳細胞を破壊するメカニズムとされている。新薬の投与量が最大の患者に対して追跡調査でアミロイドの減少効果が確認された。

 

Source: Nature

 

これらの患者たちは投与から6カ月でもアミロイドの増大が認められず、認知症の進行がみられなかった。ただし被験者数が少ないため、現在、20カ国から2,700名の被験者を募集して本格的な新薬の効果を評価する予定だという。専門家は今回の新薬の投与結果は期待できるが、一般的な治療薬となるかどうかは断定できる時期ではないとしている。また少数の患者に対しての有効性が確認されても多くの患者に適用した時に、同様な結果が全員に保証されるとは限らないとして慎重な意見を持つ免疫専門家もいる。

 

認知症を煩わない高齢者は特殊な抗体(Aducanumab)を持つことから、この抗体がアミロイドの蓄積を阻害すれば認知症特効薬となることが期待された。しかしその効果は1,000人に1-2名の有効性しか確認できなかった。今回開発された新薬は別の蛋白がアミロイド蓄積を阻害することを利用したものである。

 

 

ただし大量投与では、APO type-4遺伝子を持つ患者への脳に異常を起こすリスクファクターが高いという副作用も確認されている。認知症患者への一般的な治療薬となるためには副作用をなくすことが必要となる。世界の認知症患者数は3,600万人以上、毎年770万人づつ増加している。その40-60%がアルツハイマー型認知症である。このままでは認知症患者数は増大により社会的、経済的負担が大きくなることが予測されており、新薬開発が急がれる。