ネスレは珈琲製品の20%、UCCは25%, スターバックスは製品全て10円の値上げに踏み切った。AGF(注)とキーコーヒーも20-30%値上げを検討中であるので、大手の珈琲豆は20%以上の値上げとなる。為替の影響もあるが一体何が珈琲価格の値上げの要因なのか。
(注)AGFは2011年4月にレギュラー珈琲を平均11%値上げしている。
珈琲価格の決定価格が生産者側に主導権は無くニューヨークとロンドンの先物取引所の相場で決まる。ニューヨーク先物取引所のアラビカ豆12月物相場は6日、6.9%高の2.2080ドルで終了した。2003年に比べて実に3倍以上の高騰である。確かに中南米のアラビカ豆は生産量が減っているが他の穀物に比べれば価格変動を受けにくいはずなのだが。
米国財務省統計によれば2003年から2013年度の10年間で1ポンドあたりの珈琲豆の価格は平均で0.62ドルから1.5ドルと2倍以上増大した。珈琲需要は欧米では平衡にある一方でアジア、ロシアなど珈琲需要が伸びたことで世界全体では需要増が背景にある。しかし生産量は10年でほぼ1.5倍増大しているから、ゆるやかな消費増では突然の価格変動は説明がつかない。
珈琲生産国は自国の産業を値崩れから守るために一定輸出量に従う(OPECのような)協定下にある。またフェアトレードが奨励され生産者に過酷な労働を伴う易い賃金を前提とする不当な取引も制限されつつある。しかし世界的な経済情勢と天候不順や作物の病気等で突発的に生産量が減れば、受給バランスが崩れて価格変動となる。コロンビア生産量の減少にも絶えた安定なはずのラビカ豆は急激な相場の上昇を迎えた。(下図参照)
流通メジャー(大手4社)が仕入れる珈琲豆はいわゆるレギュラー珈琲として市場に出回り一般に広く浸透している。店頭価格には焙煎、粉砕、袋詰め、配送などの費用が含まれ生豆の価格が基本になる。シアトル珈琲に代表される新興企業の大量発注も価格相場を左右する。過去、珈琲在庫量が減少し南米が生産調整で輸出を増やすことで受給のバランスが崩れると1988年頃の価格の暴落が起こった。
今回は南米、特に世界全体の1/3を生産するブラジルのアラビカ豆が「珈琲さび病」により1/3の生産減となる恐れがある。このことで特に高級な豆の入手が困難になり、全体として需要過多による価格相場の急激な上昇が珈琲市場価格に影響したと考えられている。「珈琲さび病」(注)の蔓延は中米一般にみられるが、その原因は高原にもかかわらず気候温暖化で雨が増え、温度、湿度が菌の増殖に適したものとなったためと推測される。
(注)菌「Hemileia vastatrix」はコーヒーの葉に寄生し乾燥させる。葉の色を変色させる作用から、ロヤは別名「さび病」と呼ばれている。下の写真のように菌によって葉には「さび」のような色の斑点とともに乾涸びてしまう。
価格上昇の背景は「さび菌」の増殖がありその原因には気候変動が深く関わっていた。サンパウロの水不足も「さび病」もともに深刻である。
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