国の政治的安定は、その国のインフレ率、失業率、金利と一人当たりのGDPの動向によって左右される。特に、インフレ率と失業率の上昇は国民の不満の上昇につながり、深刻になると政権の維持が困難となり、社会の崩壊を招く恐れさえでてくる。その兆しが世界中の多くの国で見え始めている。
経済不快指数2014
今年も米シンクタンクのケイトー研究所 (Cato Institute)の2014年度の世界108カ国を対象とする経済不快指数(Misery index)のランキングが発表された。ランキングはジョンズ・ホプキンス大学の応用経済学部のスティーヴ・ハンケ教授が算定した指数に基づいたものである。
指数の算定は、インフレ率、金利、失業率を足した数値から一人当たりGDPの前年度比変動率を引いた数値である。この指数が高いほど、国民の生活が苦しく、不満が高いことになる。10.0を超えると国民は自国の経済政策に不満が高まり、20を超えると国民の暴動化、政治的不安定な状況になるとされる。
ランキング動向
2014年度の経済不快指数の上位10カ国の中で、2013年からさらに悪化した国や順位が入れ替わった国がある。一位のベネスエラは一年前と比べ27ポイント上昇し、指数は106.03と2位のアルゼンチンの68.00と大差がある。原油価格の下落、国内経済の低迷、通貨のボリバルの切り下げ、生活用物資を輸入に頼っていることから起きたハイパーインフレなどが指数を上げた要因である。
昨年は生活用品不足、特にトイレット・ペーパーが市場から消え、騒動が起きたことから、政府がトイレット・ペーパーの工場を国有化したことが話題となった。それでも、トイレット・ペーパー不足は解消されず、2月には隣国のトリニダード・トバゴとの間で石油とトイレット・ペーパーとの交換せざるを得ない取引の商談に追い込まれた。
暴動リスクの高まった国々
順位を上げたのが、戦争による高い失業率、経済の低迷、通貨安、ハイパーインフレが要因となったシリアとウクライナである。経済不快指数が25以上の国は年々増加傾向にある。高い失業率と金利が指数を上げる要因となっている。そうして、108カ国中、指数が10以上の国は89カ国で、世界中の大半の国民は経済情勢に不満を抱えていることになる。
不満を持つ国民は潜在的な暴動の危険性をはらんでいる。そして些細な事件(人種差別、警察の横暴、事故、政治腐敗など)をきっかけに、不満が爆発して暴動が起きるとそれが連鎖する。それを政府が鎮圧することで、さらに不満のボルテージが高まっていく。こうした状況においては「きっかけ」を故意につくることで、簡単に政府転覆シナリオが簡単に描ける危険性が高い。
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