「イスラム国」ツイッターの実態とは

Mar. 8, 2015


 過激派組織の「イスラム国」は、ソーシャルメディアを主な情報発信の手段としているが、新しく発表されたレポートでその実態が解明されつつある。


 「イスラム国」の主張、宣伝、脅迫メッセージはツイッターや動画サイト「You Tube」などのソーシャルメディアを通じて発信されている。その規模と影響力をツイッターに限定して調査したレポートがこのほど、米シンクタンクのブルッキングス研究所(Brookings Institute)が発表したThe ISIS Twitter Census (「イスラム国」のツイッター調査)である。



 「イスラム国」による欧米ジャーナリストを含む人質の殺害や東シリアとイラクでの支配地域の拡大の投稿が頻繁に発信された2014年半ばに、ツイッターは「イスラム国」と関連あるアカウントの停止を始めた。調査は2014年の9〜10の2ヶ月間に行ったものである。


 これまで、「イスラム国」に関しての基本的な疑問は、「イスラム国」を支持するツイッター利用者が誰であり、その規模、そしてこれによる情報の波及についてであった。調査はこれらを初めて調べたものである。



 レポートによると、「イスラム国」は少なくとも46,000のアカウントを持っており、最も多かった発信地域はサウジアラビアの866アカウントであった。アカウントユーザーのプロファイル情報を元に調査した結果、最も多い発信地域はサウジアラビアに続き、シリア、イラク、米国、エジプト、クウェート、トルコ、パレスチナ占領地区、レバノン、英国、ツーニジアの順であった。下の図はブルッキングス研究所の調査でわかったアカウント国分布である。



 

 ツイッター利用者の5人に1人は英語を使い、3/4がアラビア語を使っている。1人のアカウントユーザーにつき、通常のユーザーより多い、平均して1,000人のフォロアーがいる。その中でも、500 から2,000のアカウントはヘビーユーザーであり、情報発信が活発であるという。

 

 さらに、調査は、ツイッターの「イスラム国」関連アカウントの停止の影響を調べた結果、停止したアカウントのメッセージが複数の新しいアカウントから連鎖発信されていることが判明した。つまり、アカウント廃止は「イスラム国」のメッセージ発信能力には限定的な影響しか持たない事になる。

 

 ソーシャルメディアにおいては、規制を強めることで、予期せぬ影響や逆により発信情報が広まる可能性があることは否定できない。今はソーシャルメディアを通じて「イスラム国」に共感、支持、興味を持つ若者、イスラム原理主義者、反西洋文化、反体制、反キリスト教などの過激主義的思想を持つ人々の間でつながりがもてる時代である。

 

 これから、ソーシャルメディアにおける社会的に過激な思想に対しての対応が問われる。しかしこれはインターネットの基本的な表現の自由と個人情報保護の問題と関わる。インターネットにはいまだにこれらのはっきりした規定がないのが現実であり、その点をついた行為であるといえる。