1928年にツッペリン伯爵が総力を挙げて開発したグラーフツッペリン号の2隻は当時としては最新の技術でつくられた235mにも及ぶ巨大な旅客用飛行船であった。鉄骨で支えられた胴体には水素が充填され航続距離1万kmという長距離飛行性能はずば抜けていたが、悲運にも安全なヘリウムの代わりに水素を充填せざるを得ない時代であった。
新型のヒンデンブルグ号は大西洋横断飛行のあと、アメリカ東海岸で着陸時に爆発炎上し、これがきっっかけでツェッペリン社は短い生涯を終えた。飛行船の安全性はその後、ヘリウムを充填することで向上し、中型、小型の飛行船は世界中を宣伝飛行や観光飛行で飛び回っている。
現代のツェッペリン
1990年にツェッペリンNT(下の写真)がハイテク飛行船として蘇る。鉄骨を炭素繊維とし新素材の胴体外皮膜で軽量化し、全長75mで12名の乗客を乗せ900kmの航続距離を持つ。飛行船には環境に優しく、ゆったりと空の旅を楽しめるメリットがあるが、それが見直されている。重量物の運搬や、偵察目的の軍用利用等(注)も計画されツッペリンの夢はかなえられるかもしれない。
(注)LEMV(Long Endurance Multi-Intelligence Vehicle)軍用のハイブリッド(飛行船と飛行機の揚力メカニズム)飛行船HAV-304が米国ノースロップグラマン社で開発された。
オーストラリアの計画で最大150トンの物資を運べる空飛ぶ円盤型の飛行船が6-7年後に完成するという。
米国の企業が開発をすすめているハイブリッド飛行船は全長100mで66トンの積載重量のもの。(上の写真)
Skycat
英国の企業が重量物運搬用の飛行船を提案している。また国境の監視や偵察等の滞空時間の長い任務には向いている。大量輸送には向かない最大の欠点である速度の遅さは、一方では地上の景色をゆったり楽しみながら移動するという「空のホテル」の用途に向いている。いまのところ空のホテルと言えばエテイハド航空のA380のレジデンスクラスだが、もっとゆっくり景色を楽しみたい人には飛行船の旅の方が魅力的である。下の写真はツッペリンNT。もしかしたらみかけた人もいるかもしれない。
未来型飛行船
その他の特徴を生かした未来型飛行船については別サイトが詳しい。それぞれユニークなデザインはSFの世界だ。
エアーランダー
HAV-304は実用にならなかったが機体はその後イギリスで第二の人生を送ることとなった。Airlanderという新しい名前のハイブリッド飛行船は全長91mで世界最大の航空機カテゴリに分類され、ノースロップ社とともに開発した企業ハイブリッド・エア・ビークルズ社はイギリス政府から補助金を受けて発展型の隻最重量50トンのAirlander 50の量産を計画している。
飛行船の応用はまだまだ発掘できそうだ。例えば現在はヘリコプターで行なっている高圧線の監視、保守、高層ビルの災害救難、交通監視、離島の監視、海峡監視、港の海上交通監視、自然環境の監視、地震災害、通信の中継の救難など。
ドローン化や太陽発電を動力とすることで滞空時間を増やせるし排気ガスの心配がない分、クリーンな乗り物として見直されるべきだろう。