原発停止後に電力需要が火力発電でまかなえている事実と再生可能エネルギーの電力買い取りが増えたことで、再生可能エネルギーへの期待が膨らんだ。写真(衛星から見た欧州の夜景)の明るい都市部は電力使用が大きく原子力発電所の分布に重なる。
ドイツでは脱原発の代償として、電力料金に上乗せされた負担が一般家庭の家計と産業を圧迫している。また再生可能エネルギーの比率を増やしたスペインも同様の問題に苦しんでいる。原発推進派の言い分は、「過去に放射能汚染事故を起こした原発は旧世代型で、現在の最新鋭型(第三世代)は安全で環境保全も万全だ」というものである。
すでに大量の核燃料廃棄物が存在しているので、たとえ「脱原発」路線に舵を切っても、廃炉と核廃棄物処理は気が遠くなるほどの時間スケールで続く責務となっている。2050年に世界人口は90億に達し、新興国が先進国に追従する成長を遂げエネルギー需要は倍増するものと予測されている。これには新たなエネルギー源を確保することに加えて、エネルギーを効率良く使う、両面作戦で対処していかなければならない。
再生利用エネルギー
再生可能エネルギーには
・ 太陽光—ソーラーパネルによる発電など
・ 太陽熱—太陽熱を集光し、熱水を作りその蒸気でタービンを回し発電するなど
・ 風力—風車による発電など
・ 地熱—高温源泉による蒸気による発電や、マグマを利用した発電など
・ 水力—貯水式ダムや水車による発電
・ 潮力—潮の満ち引きで生じる海面差を利用した発電
・ 海流—寒流・暖流など潮の流れで水車を回す発電
・ バイオマ—植物からエタノールや軽油・重油を作る
・ ヒートポンプ—エコキュートなどの大気・地熱などを利用したシステム
・ 燃料電池—水素やアルコールと大気中酸素の結合反応を電気エネルギーとして取り出す
などの項目がある。
2013年のエネルギー白書によればエネルギー供給構成は1970年代から減少している石油依存は、2010年代には40%にまで落ち込み、代わって石炭、原子力、天然ガスで残り60%を占めるにいたった。しかし再生可能エネルギーの利用率は低い。再生可能エネルギーの初期投資が大きいからである。単純にコストを考えれば安い天然ガスと石炭は魅力である。また環境汚染や廃炉、使用済み核燃料の処理コストを含めた原子力発電のコストの優位性は疑わしい。下のグラフは我が国の燃料種別の発電量の経緯である。
再生可能エネルギーのコストを比較すると、高い順に①太陽光、②バイオマス発電、③小水力、④風力、⑤地熱発電となる。太陽光発電は設備投資がネックだが、買取制度の導入によって国内の発電量は増大し2015年度には500万kWに迫るまでになった。ただし日本では太陽光発電の大半は住宅用太陽光発電である。一方、風力発電の整備は遅れている。2011年までで太陽光発電の1/2程度の255万kW。また水力発電はさらに低い200万kWである。火山国の優位性にも関わらず地熱発電は53万kWにとどまる。
家庭向けに天然ガス(都市ガス)を燃料とした燃料電池発電システム、「エネファーム(家庭用燃料電池コージェネ)」の導入実績は3万を越した。天然ガスの主成分メタンから水素を取り出して空気中の酸素と反応させ水をつくる時に発電し、廃熱を利用することで発電1kW、排熱出力1kWが同時に得られる。これだけでは家庭で使用される電力の約半分の電力にしかならないが、残りを太陽光発電で補うことで実用的な2kW発電も可能になる。また10kWパネルを屋根に取り付けた戸建て住宅用が人気を集めている。オフイスや工場向けの燃料電池発電システムも増える見通しで、水素ガス供給源としての天然ガスの比率は高くなると考えられる。
エネルギーの近未来像
a) 再生可能エネルギー、b) 天然ガスのクリーンエネルギー化(燃料電池)、c)原子力利用継続が考えられる。この場合、第4世代原子炉は水素供給基地に隣接させれば水素社会を支える拠点となる。原子力からの脱却をはかるのか、継続するのか、重要な分岐点を迎えようとしている。しかしどちらにしても旧式化した原子炉の廃炉と核廃棄物の処理は継続しなければならない。もはや原子力と「縁を切る」事はできないのである。a)、b)、c)のバランスを国土に適応させることが必要になっている。