MacBookにみる「切り捨ての美学」

Mar. 13, 2015

 

 NECの13.3インチノートPC、「VersaPro UltraLite タイプVG」は世界最軽量、約779g、薄さ16.9mmのスリム設計でウインドウズ機では最新最軽量モデル。Core i7 4500(U)のCPUで最安値は13.1万円。


 MacBookはこれまでの高負荷用のMacBookProとモバイルに徹したMacBookAir(上の写真)のどちらにも属さない、新しいテクノロジーの実践と例によって「切り捨て」の美学を追求したモデルである。


 まず外見上の特徴はiphone6と同じ、シルバー、ゴールド、スペースグレイの3つのケースに収まっているが、背面のリンゴマークはライトアップされない。iphoneとおそろいにできる嗜好はMacBookAirでもできたはずだが...


 ハード面での新しさが目につくのはまず一番大きな点は、RETINAデイスプレイの採用で226ppi、2304x1440ピクセルに対応する12インチ画面となる。MacBookProでは13インチのRETINAデイスプレイモデル(227bpi、2560x1600)がある。MacBookAirは13インチがあるがRETINAではない。なのでデスプレイに関してはMacBookAir<MacBook<MacBookProの順での位置づけになる。


 次に感圧センサによりストロークをなくして薄さに貢献したTACTICエンジン付きのトラックパッドとキーボードメカの改良にようる入力し易いキーボードだろう。MacBookAirのキーボード(上)ですら夜間の使用が容易になるバックライトはうれしい装備だったし、不満はなかった。


 バッテリーについては薄さの追求で最も犠牲になる部分であるが、これもファンレスにしたことや隙間を埋め尽くした努力のかいがあって連続ネット接続時9時間(動画再生10時間)というMacBookAirでいえば11インチ版、MacBookProでは13インチの10時間と並ぶので同等といえる。


 MacBookのバッテリー容量39.7Whリチウムポリマーに対して、13インチのMacBookAirは54Whで12時間のWiFi接続あるいは連続動画再生が可能である。12-13インチで比較するとバッテリー駆動時間はMacBook〜MacBookPro<MacBookAirの順になる。


 MacBookAirとMacBookProの中間と位置づけるにはしかし少し無理がある。高負荷用のMacBookProは別にしても、価格で下位にあたるMacBookAirが1.6GHzデュアルコアIntel Core i5、オプションで2.2GHzデュアルコアIntel Core i7が可能、に対して1.2GHz版でも電力消費の少ない1.2GHzデュアルコアIntel Core Mプロセッサ、オプションで.3GHzデュアルコアIntel Core Mプロセッサになる。


 おそらくAppleは薄さと引き換えにバッテリ容量が少なくなることで連続駆動時間が犠牲になるため、低電力プロセッサで置き換えたのだろう。台所事情はわかるがこれで、位置づけはMacBookはモバイル性を重視したエントリモデルであることがはっきりした。しかし値段的には驚くべき逆転現象が起こる。MacBookとMacBookProがカブるのだ。下の写真はMacBookAirの電源コネクタ。マグネットがついていてリバーシブルなので手元が暗くても安心だ。



 ここまでは驚く事ではない。ファッション性を重視するAppleがiphoneで成功したゴールドのケース選択肢をモバイル製品に持たせた、ということである。iphoneとおそろいのゴールドのMacBookはテータスシンボルとして女性層を中心に人気がでるだろう。しかしAppleは使い勝手も犠牲にして新しい試みをコネクタでやってのけた。

 

 MacBookAirのコネクタ類はUSB2個、Thunderbolt、電源と(13インチ版ではSDカードスロットであった。この中で電源コネクタとUSBポートあるいはThundervoltが独立していることは重要である。バッテリ充電中にUSBポートからLANに接続したりThundervoltからVGAやHDMI端子を同時に使えることは必須なのである。MacBookは新しい試みとしてたった一個のUSB-Cというリバーシブル対応のポートで、充電、USB、VGA, HDMI、ビデオ出力まで兼用とした。このため側面にはUSB-Cポートが1個あるのみとでスタイリシュではある。

 

 ではどうやって接続するのか、といえばVGA使用又はHDMI仕様マルチポートアダプタ9,500円かUSBのみならUSB-CのUSBアダプタ2,200円が別途必要となる。しかしマルチポートアダプタは常時使いたいのでぶら下げて持ち回るのは格好が悪い。どうしてこのような潔さを実行したのか謎である。その裏には寸法的にコネクタを装備する隙間がなかったことしか考えられない。「切り捨ての美学」はこうして実行された。受け入れるかどうかは貴方次第だ。(個人的には仕事はMacBookAir13インチの性能とバッテリー容量そしてその価格には十分満足しきっていてMacBookに興味はない。)

 

 これまでAppleの「切り捨ての美学」で成功したのは、光学式メデイアを潔くとっぱらったMacBookAirであった。衝撃的ではあったが、いまとなっては先見の明があった。USB-Cコネクタ一本で代用するのも悪くないかも知れないが、マルチポートアダプタは付属するべきだろう。


 RETINAを奢ることでかろうじてProと差別化を1インチ小さいデイスプレイでかろうじて差別化を果たしたが、バッテリーでAirに差を付けられてしまったMacBook。MacBookにRETINAでない12インチでそのかわりバッテリーを増やしたモデルをつくったらよかったのかも知れない。だがバッテリーの異なる2モデルを用意するとコストがかかる。ファッショナブルな使い方なら仕事用のRETINAはオーバースペックの気がする。