都会でも時間帯によって流しているタクシーを捕まえられないことがある。例えば11時を過ぎたら六本木かいわいで空車をみつけるのはほとんど不可能である。空車が見つからないとき貴方はどうするだろう。普段よく使う無線タクシー会社に電話して空車を手配するのではないか。会社は愛想よく住所をききすぐ車を差し向けるというが、なかなか現れずにイライラしたことはないだろうか。タクシーを呼び出すのならもっと手っ取り早い方法がある。それがUberという会社である。Uberはもともと米国の会社だが欧州で重宝され躍進目覚ましい。
Uberを利用するのには前もってクレジットカードと個人情報を登録して、呼び出すアプリをスマホにダウンロードしておく。必要な時にアプリを起動して現在地がわかるGooogle Mapをタップすると、会社でなく近くを走行するUberタクシーのドライバーにリクエストが届く。ドライバーは地図を頼りに客のもとに車を手配する。会社を経ないので会社にはドライバーと客の間に介在する中継係が存在しない。
ドライバーと客は割り振られた番号で連絡し合うので、通話やSMSは可能だが電話番号は残らない。個人情報はドライバーがアクセスできないというわけだ。しばらくしてUber空車が目の前に止まれば、乗り込んで行き先をつげれば良い。目的地に着いたら財布を取り出す必要はなく、ただ降りるだけで料金はクレジットカードに請求される。
さてタクシーに乗る大半の人のクレームは目的地を知らない(ふりをして)最短でないルートを使われることだろう。こまかく道路を指示しようものなら車内の空気が凍り付く。Uberは目的地に到着したらルートが地図上に料金とともに表示されるので回り道をしたりすれば一目瞭然である。ごまかしようがないのでドライバーは最短ルートをたどらざるを得ない。
ドライバーにとってはごまかしがきかないが、顧客重視の基本を守ることでUberへの信頼性は増して人気につながっている。もう10年も前にフランスの田舎町でタクシーを呼んだときに、ナビゲーションの画面で行き先を入力すると会社に連絡がいくタクシーに乗った。ナビゲーションからの位置情報を無線で送信することは、意外と古くからあったので、Uberのビジネスモデルは決して新しいものではない。
欧州や日本ではタクシー業界はこの便利なビジネスモデルが気に入らなくて反対運動(下の写真)が起こり、またドライバーと客は電話番号をお互い知らないでも連絡がとれるので、キャンセルの対応を巡るトラブルが問題になっているという。そんなことにはおかまいなく顧客の要求に応えるUberビジネスモデルは躍進を続けている。地方都市の中には市営バス路線をオンデマンド(予約)の乗り合いタクシーに置き換えているところが増えて来た。格安なので人気だが予約が面倒なので、スマホアプリが出来たら高齢者でも画面をタップして予約するのは大歓迎だろう。空のバスを運行することを恐れる前に必要な時にサービスを提供するビジネスモデルに転換すべきだ。
スマホ単体の機能はでつくした感があり販売も明らかに飽和状態に達した。しかしアプリ同士をネットワーク化して、Uberのようにサービスを展開するといくらでも応用範囲が広がる。季節の花やグリーンの注文と配達、ピザや寿司の出前、病院の送迎、買い物代行、宅急便受付代行、クリーニング、家の掃除、洗濯など考えればいくらでもニーズはありそうだ。この動きに反対するのは既製権益にしがみつく頭が固い経営者ということなどだろう。