日本のインターネット接続事業は変遷を繰り返して来たガラパゴスである。NTT主導で華々しくデビューしたISDNは失敗(注)、米国を追従したADSLを経て、現在では光回線(FTTH)の普及が急激に拡大している。多額な公共投資の失敗を含むこれまでの紆余屈曲は何故生じたのだろうか。
(注)高速増殖炉「もんじゅ」同様、ISDNの失敗を非難する人は少ない。専用回線を含むインフラ投資は莫大であった。デジタルとアナログの棲み分けにより複雑なシステムとなったが技術で強引に乗り切ろうとした過度期であった。失敗を失敗と認めない体質は負けている戦争を、勝っているように見せかけたこの国の(指導部の)特徴かもしれない。
本命と目されていたデジタル回線のISDNの普及よりアナログ回線のADSLが普及していったのは、既存のインフラが使えることと通信速度の向上と、何よりも新たに回線を引く必要の無い至便性が原因と考えられる。しかし、通常のアナログインフラでは回線環境により利用者が増え続けると、通信速度が保てなくなることから、将来を見込んだ光回線への移行が推進されている。
一方、無線LAN(Wi-Fi)環境も駅、一部の車内、ファーストフードを中心に無料スポットが増えた。東京都の路線バスは全線、地下鉄、病院の一部も整備予定である。ほぼ50Mbpsで、接続料金も安価だ。また、PCユーザーには魅力的なデータ無線通信カードもe-mobileが受信で21Mbsまで高速化している。有料Wi-FiサービスWiMAXは下り最大70Mbpsと高速であるが、インフラ整備が遅れている。一般ユーザー向けのインターネット環境はここ数年で格段に向上してきたといえる。
ガラパゴスと揶揄される日本の携帯であるが、国土の狭さでネット環境ではガラパゴスがむしろ快適なのである。欧州のホテルは無料の有線LAN、Wi-Fiが設置されているところがほとんどであるが、高級ホテルでは有料で料金は決して安くない。しかし米国ですら一般家庭ではブロードバンドよりモデムが中心であった。基本料金で市内通話が無料であったためである。
米国が全てのネット環境で優れているわけでもない。ケーブルテレビが圧倒的に普及しているのにもかかわらず、ケーブルを利用したブロードバンドが普及していない。Intelがブロードバンドの普及にWiMAXを採用したのは固定回線網を光回線にするより初期投資が少ないと考えたからであろう。日本でも地デジ化が一段落すると膨大なコンテンツを提供できる光回線サービスが中心となるだろう。
TVに代わり映画や音楽、ゲーム、各種情報をとりだせるネット接続が在宅ユーザー向けには覇権をとる時代が近い。一方、WiFi接続は無料Wi-Fiスポットの増大と有料サービスが充実しユビキタス化がいっそう進む。ネット環境の事業戦略は(顧客とニーズに合わせて)いくつかを相補的に利用するべきである。国の事情も考慮してその国の文化に整合する賢い選択が必要だ。その意味で快適に暮らせるならガラパゴスも良い。