中国の模造品は有名で、市販品を1台購入しては、分解して型を取って模造品を作るのが日常茶飯事であった。原型を使わないので寸法精度が悪くなり、粗悪品となる。結果故障が多く、故障した模倣品ユーザーが正規品メーカーに修理を依頼した時点で、模造に気付くという。
国産化の意味
一方で中国の研究所の設備の中には世界最先端のものもある。しかし中国の「国産化」とは「図面を起こして製造する」ということではなく、市販品を分解してコピーするという意味である。彼らにはコピーという感覚はもともとないようだ。一刻も早く先端製品を製造して輸入に頼らないようにしたい、という欲求の前には手段を選ばない、といったところなのだろうか。中国は欧州(特にドイツ)から大量の技術者を招聘し、海外技術の習得し、米国、日本に留学した学生達が国に戻ると高給で雇い技術レベルの向上に努めた。
新幹線、宇宙、航空機、建設関係、電子機器において世界の先端に並ぶこととなったのは国家の研究開発費の投入規模にも依存している。中国の研究開発費が2012年の2570億米ドル(約30兆円)と2008年の倍増を成し遂げた。これは経済危機で伸び悩んだEUの2820億ドル(約33兆円)に匹敵する金額となった。2014年は3110億ドル(約36.3兆3円)を投じ、初めてEUを抜いた。
ピンからキリまで
近頃打ち上げられた固体ロケットは、相次ぐ民間宇宙ビジネスの失敗をよそに、成功が続いたせいで、いかにも最先端技術で遜色がないようにみえる。一方では新幹線の衝突事故で基本的な欠陥が明らかになり、安全性の追求がおろそかになっている。また中国で製造された車は、外版の継ぎ目に隙間があり、塗装も弱いため、酸性雨で錆びてぼろぼろになるなど粗悪品の代名詞である。電子機器ではしかし、iphoneそっくりの粗悪品をつくる会社から、遜色のない製品を格安で提供するシャオミのような先進的な会社からまで様々で、一言で中国製品=粗悪品として片付けられない面もある。
当初、中国の目指した国産車両は、高速での営業走行に十分な信頼性がなかったため、複数の海外企業から車両や制御システムを調達することとなり、川崎重工業が提供した車体はJR新幹線E2型をベースにしたため、瓜二つの新幹線顔が中国に登場しコピーと騒がれた。全体ではフランス、ドイツ、ブラジルの企業の車体が導入された結果、それそれの国の車体が中国を走る結果となった。
ライセンス生産で技術流出
後に中国は川崎重工業の車体を「自国技術」として世界にアピールしたが、これも中国の「国産化」であった。中国はこの車体をライセンス生産しその後、高速型車両も購入して本格的な高速輸送時代を迎えた。しかし衝突事故を起こして内部からも「設計上の安全速度を無視した営業運転」への告発もあり、安全性への懸念が広がることとなった。
中国で新幹線に乗車するたびに、車体デザインは日本の車体に似ているが中身は別という印象が強くなる。一等車両の大型の個別シートはピッチも広くて便利だ。2015年度で25,000kmの区間が完成すると、JRの6倍以上と桁違いの路線距離となる。これまでは上海から新幹線で2時間30分の地方都市は夜行列車で一晩かかっていた。そういう不便さが一気に解消し、都市間の人員移動が活発化し、経済発展に大きく寄与したことは間違いない。技術は高いところから低いところに流れるのだから流出はやむを得ないのだろう。しかし技術に見合った運転をしなければ安全性が損なわれる。技術を育てなければリスクが増えることに気がついて欲しい。