テロに屈せず開催にこぎつけたCOP21

1.12.2015

Photo: CLIMATE GENERATION



パリのテロ事件の後、厳重な警戒にもかかわらず気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)の開催に反対するデモで逮捕者がでた。開発途上国、先進国の首脳がテロの危険を冒して、パリに集まり会議に臨んだ背景には合意を自国に有利な条件に持ち込もうとする背景がある。


11月30日から12月11日までCOP21、京都議定書第11回締約国会議(CMP11)が開催される。今回のCOP21では、京都議定書に続く、2020年以降の新しい温暖化対策の枠組みが、開発途上国、先進国の合意のもとにどのようにつくられるかを決める重要な会議となる。


平均気温から見た地球温暖化(下図)が温暖化が顕著になったとされる産業革命前に比べて上昇を2度C以内に抑えるべく排出ガス規制は世界全体の責務であるが、温暖化対策を計画的に推進してきた先進国と、将来の経済活動の発展も視野に入れる途上国とでは、優先度に差がある。

 

しかしミニ氷河期に近づきつつある中で、温暖化を狭いウインドウで評価することが(それも平均気温というパラメーターで)議論する正当性についてコンセンサスが得られているわけではない。科学的根拠のない温暖化シナリオが一人歩きし、その中で排出ガス規制枠組みができ取引で莫大なお金が国家間で動いている。


温暖化自身が確定事項ではないことに加えて、温室効果ガスによる温暖化メカニズムは反論も多く専門家の間でも合意が得られていない。それでも温暖化シナリオのもとに国家が動いて規制に奔走する(テロをも恐れず)首脳が一堂に会するCOP21。その結果を吟味すればどの国が利益を得ることになるのかがはっきりするだろう。ただしここではその詳細には立ちいらない。

 

Photo: The weather network

 

安倍晋三首相はCOP21の首脳級会合で日本の積極的な温暖化対策について演説を行った。骨子となるのは、①低炭素社会の実現に向け、日本が得意とする水素エネルギーなどの技術力で地球温暖化対策に貢献する、②対策に取り組む途上国支援として、2020年までに官民合わせて年間1兆3000億円の予算を組む、2点である。特に日本の得意とする革新的技術の開発(具体的には水素社会に向けた水素の製造、貯蔵、輸送技術や、EVの走行距離を現在の5倍にする次世代蓄電池の開発)に向けて「エネルギー・環境イノベーション戦略」策定するとした。

 

 

一方、国連事務局の試算では上図の削減目標を各国が達成しても、世界の平均気温の上昇を産業革命の前と比べて2度未満に抑えるという目標は実現できないとしている。世界人口が90億、エネルギー需要もそれに対応して倍増、20億台の車がひしめき合う2050年に人類が迎える危機は環境、食料、水資源、エネルギーと幅広い。根底にある人口抑制を真剣に取り組むことで削減目標を緩和できるなど、新興国にも達成できる条件をつくることが重要だ。