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ニカラグア運河は第二パナマ運河とも呼ばれこれまで太平洋と大西洋を結ぶ唯一の運河であったパナマ運河の通過制限を解消するために、中国が得意の海外インフラ事業として、ニカラグアに建設を進めているものである。確かにパナマ運河の通行には通過に際して制限があり、ここを通る輸送量の増加に伴い大型船の通過が可能になれば、中国のみならずアジアから北米・南米への輸出産業にとっては実現すれば大きな弾みになる。
しかし2014年に着工して2019年に完成の予定だったが、現地からは順調に工事が進展していない情報が入るばかりで、現在は完成が2020年とされているが懸念する声が高まっている。オルテガ大統領と中国企業HKNDグループの期待と裏腹の建設に関する問題点を整理してみる。まず全長275.5kmの長さはパナマ運河は全長わずか80kmに対していかにも長い。
特徴は中間が巨大な湖(ニカラグア湖)で前後を水路で挟む形になっていること。湖の部分は109kmであるので陸上の工事区間は166.5kmと実質は減るが、それでもパナマ運河の2倍。パナマ運河の建設に10年かかったことを考慮すれば中国がトンネル掘削が得意であるとしても、6年で完成、というのは並大抵な事業ではない。
現在の問題はニカラグア湖の自然環境破壊と工事区間の住民立ち退きが進展しないこととされるが、そのほかにもリスクが存在する。そのひとつが火山リスク。ニカラグアのモモトンボ火山は活火山で最近も火山性の地震が観測され、噴火の危険がある。上の写真は2012年に噴火したニカラグアのサンクリストバル火山。工事が容易な湖への出入り口周辺では始まっている(下の写真)が難航しているのは内陸部である。
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中南米はRing of Fireの一部で周辺に活火山が多い。グアテマラの国家災害対策当局は2015年11月10日、南部にあるフエゴ火山の活動が活発化したとして、上から2番目の警戒レベルにあたるオレンジ警報を発令し、近隣ホテルに避難を命じた。首都アテマラ市の南西に位置するフエゴ火山は、夜間にかけて活動を活発化し、噴煙を上空高く吹上げ、溶岩が山の斜面を流れ下った。
しかし最大の技術的問題は起伏が激しく森林に覆われた南米の大地でインフラ工事する十分な技術をHKNDグループが所有しているかどうかである。今後工事が難航すればパナマ運河の拡張工事によって、当初の存在価値が揺らぐことになりかねない。海外のインフラ事業のリスクを経験することになるのか、突貫工事で2020年にニクアラグア運河が完成するのか予想がつかない。しかしたとえ完成しても運河の所有権は100年にわたってHKNDにある。完成までは中国とニクアラグア政府のリスク、完成してからは通行する国の安全保障上のリスクとなる。