太陽エネルギー利用研究のマイルストーン2015年

23.11.2015

Photo: Lase Focus World


FSVやエネファームなどの燃料電池は水素を燃料とするゼロエミッションのエネルギー源として期待されている。FCVの実用化には水素ステーションの全国展開が必要であるし、エネファームの燃料を都市ガスから水素に転換させて効率化をはかるためにも、水素の製造を太陽エネルギーで行うという「ソーラー水素」に関する研究開発が急がれている。2015年に日本初のマイルストーンとも呼べる研究開発成果が報告さtれた。


Photo: inhabitat

 

太陽光で水素を製造する手っ取り早い方法は誰でも電気分解を思い浮かべるだろう。この方法は大量の電力を用いて水素を製造するには効率的な方法であるが、太陽光を利用して発電し電気分解すれば燃料製造でもゼロエミッションを達成できるし、トータルシステムとして水から水素、水素から水へというクリーンなサイクルが実現できる。


 

ソーラー水素

ソーラー水素の製造には太陽光を光触媒で水分解を起こす方法と太陽電池で起こした電力で電気分解を起こす方法がある。前者のエネルギー効率は現在は2-3%10%以上と考えられる実用限界に達していないが、後者は2015年に大きな進展があった。まず理研が15.3$という世界記録を達成した後に、各国で研究が加速しMonash大学(オーストラリア0の研究グループが22%に記録を塗り替えた。その後、東大の研究チームが再び世界最高のエネルギー効率24.5%を達成したのである。

 

効率を上げる秘密は太陽電池セルを多重にして吸収する太陽光の波長を広げたことと、電気分解セルとの電気的整合条件を最適化したことで、無駄なく電気分解を行ったことである。FCV発売を2016年に控えたホンダは小型水素ステーションを開発した。小型ステーションでは1箇所で貯蔵できる水素の量限定され、製造するのに時間がかかるが、ソーラー水素と燃料電池の組み合わせで小規模な発電は実用化に一歩近づいた。

 

Photo: Project Hollands Hoogte

 

 

エネファームも小型化されており、200kW単位で増設できるエネルギーサーバーも実用化された。家庭向けの小型燃料電池発電は2030代に本格的な普及が進みその後、水素ステーションから供給される大規模発電も実用に入るロードマップが建てられている。

 


ペロヴスカイト太陽電池

2015年には日本でもう新型(酸化物)太陽電池の世界最高のエネルギー変換効率が発表された。ペロヴスカイトと呼ばれる層状酸化物は高温超伝導が発見された物質でもあるが強誘電体としての物性の興味から多くの研究者が物性研究の対象にしてきた物質系であった。ペロヴスカイト物質を太陽電池に応用する試みは宮崎大学の研究グループによって始められた。

 

 

初期の効率は4%と光触媒の水分解程度であったが、10%を越えると各国の研究者が競って研究開発を行うようになり、2012年には20%を超えるようになった。こうなると最も普及しているシリコンに肩を並べるようになり実用化へ扉は開かれた。特に製造価格と原料供給の観点からシリコンに比べて安価で大量製造が可能なペロスカイト太陽電池はメガソーラーやソーラー水素製造への応用が期待されている。