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アフガニスタンとイラク派兵での米国の戦死者は13年間で6,800人だが、核兵器と原子力関連の作業、一般の放射線機器の取り扱いで被爆による健康被害(癌や内臓の疾患)で亡くなった人の数はこの4倍にのぼる。2万7,000人の放射線による健康被害の犠牲者がでていることが明らかとなった。
政府はこのため53,000人の放射線作業従事者に計120億ドル(日本円で1兆4400億円)にのぼる医療費を補助することになった。1940年代後半から1950年代の核兵器実験の記録映画をみれば明らかなように、核爆発の近辺に無防備の兵士を送り込んだ。また兵器の製造と取り扱いにおいて放射線防護と被爆管理が徹底しなかったため、多くの兵士が被爆を受け退役後に健康被害を訴えたが、軍当局は被爆管理の責任をとらなかった。
劣化ウラン弾
湾岸戦争時に中東に派兵された米国兵士は69万人で、そのうち劣化ウラン弾の使用地域にいた兵士の数は40万人。α崩壊(する劣化ウランは低レベル放射性物質に分類される。しかし粉塵を吸い込めば体内被曝で癌発生リスクを増大させるとともに、腎臓に損傷を与える。軍当局は劣化ウラン弾の使用時にこうしたリスクの説明を怠り、防護措置をとらなかった。
(注1)α線は物質の透過力が弱く紙1枚で阻止できる。したがって大気中では減衰が激しく外部被爆の危険性は少ない。しかし体内に取り込まれると内部被曝で癌発生や臓器を損傷して健康被害を引き起こす。
核兵器製造
米国の核兵器工場労働者は約70万人。冷戦後にフル稼動はなくなったものの、兵器グレードの純度は極めて高い(90%以上)が、要求され半減期は長いといっても年々崩壊で純度は落ちるから、定期的に純度の良い弾頭と交換し古い弾頭から核物質を取り出して再度、精製し弾頭に仕込む必要が生じる。コロラド州ロッキーフラッツには米国最大の核兵器製造工場が1952年から40年間稼動した。プルトニウムをグローブボックス中で扱い、最終的に核爆弾のコア(デモンコア)に仕上げる作業での被爆リスクは労働者に認知されていなかったため多くの作業員が腕や手を被爆した。ロッキーフラッツで被爆した労働者は1,700人余りだが、日常の作業以外にも火災事故の処理でも被爆者を出した。
ロッキーフラッツと並んで核兵器製造のためのプルトニウム精製で有名なハンフォードは米国内で最も汚染がひどいと言われる。現在は閉鎖され放射性廃棄物の移設と除染作業が行われている。全米の環境中への放射性物質のほとんどがハンフォードからといわれるほど、ハンフォードの汚染はひどい。
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原発の放射性廃棄物
在停止中の太平洋に面したサンオノフレ原発、San Onofre Nuclear Generating Station (SONGS) 原発で、1980年代に放射性物質の不適切な取り扱いいによる環境汚染が起きている。SONGSは2012年に放射能漏れを起こして廃炉となった太平洋岸に面してロサンゼルスとサンデイエゴの中間にある原子炉施設。ハイウエイに近い場所に置かれた放射性廃棄物による汚染が広がっている。
放射性廃棄物
最近、急激に米国内の廃棄場周辺での健康被害が相次いでいる。2014年二ニューメキシコ州のカールスバッドの地下核施設で換気システムの不調で労働者21名が内部被曝を受けた。ロサンゼルス郊外のサンタスザンナのナトリウム炉実験場の周辺では1959年のメルトダウン事故や施設内の廃棄物のために半減期の長いセシウムで放射能汚染が深刻化している。周辺住民の癌発生率が増加するなど健康被害が増えた結果、事故から50年を経て事故の真相究明や放射能汚染の実態を解明する住民運動が起こっている。
米国政府も相次ぐ被爆による健康被害が増大するとようやく被爆者への医療費を負担する予算を組むことになったが、オバマ政権の掲げる核兵器廃絶とは裏腹に過去の清算に乗りだすことになった。しかし核兵器製造と原発から排出された膨大な放射性物質はすでに大気中に排出され内部被曝となって国民をくりしめることになった。パンドラの匣を開けた代償は大きい。
米国の原子炉保有数は世界一位だが40%は老朽化した。しかし廃炉費用は財政難で困難、また更新は環境汚染と健康被害で遅れたままである。健康被害への医療補助はあまりに遅すぎたといえる。