白血病を治すキラーT細胞免疫療法

10.11.2015

Photo: FMT news


白血病とは骨髄の造血細胞の遺伝子異常により、白血病幹細胞が発生し白血病細胞が増殖して骨髄を埋め尽くす病気で、「不治の病い」として知られる。白血病を引き起こす遺伝子異常が起こる外的要因は放射線によるものだけではない。そのリスクファクターはその他の癌と同じように化学物質、ウイルス、活性酸素などがある。白血病研究の専門家は多いが現実は、白血病幹細胞が突然変異で起きる本当の原因は不明なのである。


白血病幹細胞でも他の癌細胞と同様に免疫細胞の破壊を免れることにより、細胞死(アポトシス)を逃れ、増殖を繰り返す。白血病には決定的な治療法がなく、骨髄移植をしても生存率が低い。また骨髄移植そのものが過酷な治療法で、そのために死亡することも多い。

 

放射線被曝によって引き起こされた白血病としては広島・長崎の被曝後に慢性骨髄性白血病の発症が増加した例が有名である。被曝量が増えれば死亡率も高くなる。チェルノブイリでは放射線被曝による白血病発症と認定されない住民の訴えはある。ロシアの核兵器施設や米国のプルトニウム工場でも住民の癌発症率が増えている。日本でも最近、福島第一の原発労働者が被曝による白血病と認定された。



キラーT細胞免疫療法

このほどScience Translation Medicineで白血病の治療に関する新しい手法が発表され話題になっている。癌治療の中で免疫療法は効果があるとされる一方で治療費が高額で治療対象とできる癌が限定されるため、普及しているとはいいがたい。今回の手法では患者のT細胞を遺伝子を変えることによってキメラ抗原受容体を発現させ、癌細胞中のタンパク質で認識し攻撃する。


そのため患者のT細胞を取り出して実験室で遺伝子組み換えを行った後に増食させふたたび患者に戻される。ポイントは遺伝子操作によって受容体で攻撃対象を絞り込み、T細胞の毒性でターゲット癌細胞を殺す効率が劇的に改善されることになる。


開発したペンシルバニア大学の研究チームは白血病末期の14名の患者に対しこの療法を行った結果、8名について効果があり4名は悪化を食い止めることができた。T細胞の注入後の血液検査では遺伝子改変されたT細胞が長時間存在することがわかった。


免疫療法で白血病患者に光が差したが、まだ始まったばかりだが、今回の結果で今後の研究と治療に弾みがつくと同時に、患者にとって「死の宣告」に等しかった白血病のイメージを変え勇気を持って癌と闘う希望の光となった。これまでにもNK細胞に癌細胞を攻撃させるANK免疫細胞療法というものがあった。T細胞、NK細胞のほかにも癌細胞を攻撃する性質を持つものにCTLがある。



将来はT細胞、NK細胞、CTLを用いた免疫療法は副作がないため、放射線、化学的治療に置き換わる可能性がある。これまでの免疫療法の実施例は10,000件を超えたといわれるが、まだまだ始まったばかり。被曝覚悟の放射線治療が普及しているのは治療費が安いから。5,000万円ともいわれる免疫療法は効果があっても普及には今後も継続した努力が必要のようだ