2014年の12月に、ウォール街でロシアが危機的状況にあるため、保有している金を売却したとの噂が流れた。ヤフー、ブルームバーグなどの欧米メディアはいち早くこの事を報道した。
フランスの大手金融機関のソシエテ・ジェネラルは経済制裁、原油価格の急落でロシア通貨ルーブルのさらなる急落を防止するための為替介入で外貨準備の取り崩しに歯止めをかけられず、保有している金を手放す事になったのではないかとのレポートを出した。
だが、1月末に発表されたロシア中央銀行と国際通貨基金(IMF)の2014年12月の統計によると、ロシア中央銀行は売却ではなく、新たに20.73トンの金を購入したことが明らかとなった。
ロシアの金保有量は、2007年から増加傾向にあり、その購入量は年々増加している。2014年には、増加ペースが加速、年間購入量としては最高の152トン(前年度比123%)で、世界一の金購入国となった。その結果、金準備総量は1,206.68トンで、世界5位のランキングまで上がったのである。
ロシアのドル離れが加速
プーチン大統領は、ここ数年前からドル離れの必要性を主張してきた。そのことから、ロシアは外貨準備をドル中心から、中国元、ユーロや他の通貨への入れ替えを加速している。その一環として、保有している米国債を手放す傾向にあり、2014の11月には前年度比の22.7%も減少した。
現在、ドルは世界の基軸通貨である。原油や貿易の決済はドルで行われている。だが、世界の原油や天然ガスのエネルギー資源を地政学的に考えると、ドル離れは避けられない傾向にある。
ロシアは原油埋蔵量では世界第8位, 天然ガス埋蔵量は世界一位である。ベネスウェラはサウジアラビアを抜き世界第1位。イラン, イラクは第4位と5位である。これらの原油国はエネルギー購入国と通貨スワップ協定や貿易協定を通じて、元、ユーロ、ルーブルといったドル以外の通貨での決済を可能としている。この動きは拡大をみせており、ドル決済である必要性がなくなる傾向にある。
昨年から世界各国の金外貨準備に締める金の割合は、増加傾向にある。米国連邦準備銀行、ヨーロッパ中央銀行、日銀が量的緩和政策を実施している中、各国の通貨は安くなり、加えて経済危機と地政学的リスクが高い状況にある時、自国の通貨信用の後ろ盾となるのは金である。
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