ファルコン9 Part2

Jan. 12, 2015


  ロケット打ち上げのコスト削減に最も効果があるのは1段目と2段目ロケットを回収し、"Expedables"から"Reusables"にすることである。イーロンマスク率いるスペースX社の野心的なアイデアはドラゴン補給船を打ち上げるファルコンロケットの1段目、2段目を帰還させ再利用することだ。これにより打ち上げコストが1/100になる。


 しかし最終的にはサンダーバード1号のように垂直に逆噴射して着陸するためには相当な技術開発が必要になり、最初からこれを実現するのは難がある。そこでスペースX社は段階的に最終目標に到達する計画を立てた。



ファルコンロケットの概要

 ファルコンロケットはモジュール化されていて最後の数字が基本モジュール(エンジン)の個数を表す。ファルコン9は9個のエンジンを持つロケットで5号機までつくられた初期型のver.1.0、拡張型のver.1.1とエンジンを改良しファルコン9ver.1.1の1段目を3個組み合わせたファルコンHeavyが存在する。



回収実験v.1.0

 ファルコンv1.0では1段目にパラシュートを装備して海上に着水させ回収して次に使う試みは失敗に終わった。これは回収できれば再利用を検証するためのもので、海上着水といえども衝撃の効果と海水による腐食のダメージがあるので、最終的に成功しても使う予定がなかった。いわば想定内の失敗であった。



回収実験ver.1.1

 次に第1段・第2段ともにエンジンを逆噴射させて帰還させるためにファルコン9ver1.1で1段目ロケットを分離してから、9個の内の3基のエンジンを慣性飛行中に逆噴射させて減速し、着陸の直前に中央の1基を噴射して着陸する試みを行った。結果的には最後の1基噴射に失敗したが、その後に着陸寸前で空中静止には成功し、別途行って来た静止させてからの移動技術と組み合わせれば、原理的にはファルコン9ver1.1の軟着陸が可能とされていた。



今回の失敗は想定内

 ドラゴン補給船は約2200kgの物資を搭載し、ISSへの軌道にのっているが、海上に浮かべた全長約90メートル、幅約50メートルの着陸ポート(注)への垂直着陸には失敗したが、これも想定内としている。なおISSに物資を送る米宇宙企業オービタル・サイエンシズのシグナス補給船を載せたアンタレスロケットは打ち上げの6秒後に爆発して、2200kgのペイロードが消えた。今回のドラゴン補給船のペイロード2200kgは同等の物資と思われる。


(注)Autonomous Spaceport Drone Ship、ASDS


 ファルコン9ver1.1はこれまで7回の打ち上げミッションには全て成功している。スペースXは12回にわたって物資補給船をISSに送る16億ドルの契約、オービタル・サイエンシズは19億ドルで8回の補給ミッションを行う契約をNASAと結んでいる。スペースX社は1段目と2段目ロケットの着陸に成功し回収が可能になれば、補給ミッション契約は採算以上の利益をもたらすと考えられている。


 イーロンマスクの会社だけに野心的なアイデアだが、一歩ずつ前進しているので最終目標は達成されるだろう。困難な事業、リスクの高い事業では要素技術を個々に完成させていくのが基本だ。「もんじゅ再開」が決定されたが、積み重ねがない事業であれば未来はない。