ファルコン9とサンダーバード

Jan. 19, 2015

 

 イーロンマスク率いるスペースX社の再利用ロケットファルコン9は回収に失敗した。その様子は動画で公開されている。イーロンマスクが惜しい、と表現するように確かに、ロケットは垂直にパッドに降りて来て、まさに着陸寸前に傾いて激突す)。最後の段階で姿勢制御の噴射燃料を使い果たしたためだという。


サンダーバード3号と1号

 イーロンマスクはどんな幼少時代を送ったのか想像もつかないが、サンダーバードをリアルで見た世代より若かったようだ。上の写真のようにファルコン9が目指すようにサンダーバード3号は垂直に打ち上げられて、宇宙船とドッキングする有人補給船として活躍する。当時のマリオネットTVシリーズとしては画期的な未来的な科学技術が活躍する様は、子供達やその家族をも虜にした。毎回、スリリングな災害救出シーンと、何よりそれらに合わせたハイテク機器の活躍が楽しみであった。


 中でもサンダーバード1号は地球上の災害現場に宇宙船を中継基地として、連絡を受け太平洋の孤島の基地から垂直に離陸したあと、水平に姿勢を変え低空では翼を使い、高空をロケットエンジンで飛行する。この1号は移動に際しては主翼があるため安定に飛行して、そのまま、水平を保ったまま着陸する。1号も3号もパイロット達の父親の大邸宅のプール付近から発射される。


 

ファルコン9

 イーロンマスクはロケットをエンジンを下向きにして姿勢制御とともに水平移動してサンダーバード3号のスタイルをとった。これは空気力学的にも円筒が自由落下する姿勢であり、空気抵抗も少ないが、欠点は着陸時の微妙な姿勢制御だ。まずこの方式が成立するためには前もって着陸基地(パッド)を落下予定海域に相当の精度で移動しておかなければならない。膨大なシミュレーションと天候情報の入力で可能になったとしても、姿勢制御噴射を絶えず働かせるため燃料を大量に消費する。


 パッド上への着陸ではそれでもよいが、発射台にもどるサンダーバード3号を実現するには水平に移動できた方が断然有利である。また垂直降下にこだわるなら初期減速をパラシュートで行ない、最後の着地のみロケットを使用することも選択できたであろう。しかしパラシュート回収に失敗した苦い経験とロケットエンジンの再起動に自信を持つスペースX社は、すでにグラスホッパーという実験機で垂直降下における姿勢制御技術を習得していたため、難しい着陸方式に挑戦した。また過去にはロケットの回転で燃料が遠心力で偏りロケットの燃焼が完全にできずに失敗したが、着地脚を展開し姿勢制御でこの問題は解決した。着陸脚を展開して垂直に着陸する様子はまさにサンダーバード3号を思わせる。



失敗に学ぶ会社

 イーロンマスクは次回には姿勢制御噴射の燃料を余分に積んで再チャレンジする強気の構えだ。ゲームっぽいシミュレーションでは打ち上げから回収のシミュレーションがみられる。イーロンマスクは無謀な賭けでなくむしろ地道に計画を進めて来た。次回が楽しみである。