今週はノーベル賞の授賞式がスウェーデン首都のストックホルムで開催されることから、テレビでその美しい街並みをみることが多かった。スウェーデンと言えば、高福祉社会で教育、医療が充実した豊かな国家というイメージだが、そのイメージは過去のものになりつつある。治安の悪化で安全に暮らすことすらままならない国になったことはあまり知られていない。その理由を探ってみると意外な事実が浮かび上がった。
スウェーデンの移民容認政策
スウェーデンは欧州諸国の中でも、早くから移民を受け入れる政策を取ってきた。1990年代には、バルカン諸国からの移民を受け入れた。2000年以降、イラク、レバノン、イランなど中近東諸国の移民が増え、2012年からは週1,250人の勢いでスウェーデンに移住してきた。そのため、イスラム教徒の人口が急増、地域によってはスウェーデン人が逆に少数派となり、そこからスウェーデン人と移民が住む場所が分かれていった。
イスラム教徒の移民たちは定住すると、兄弟、祖父母など身内を呼び寄せるため、急速にイスラム系居住区が増えた。スウェーデン語や文化は理解できず、スウェーデン社会の1人となることなく、イスラム法下による裏社会をつくりだした。イスラム系居住区における失業率は70〜90%、犯罪発生率も高く、豊かだった街の一部は次第にゲットーと化した。
暴動の火種になるゲットー
スウェーデンは欧州の多文化国家のモデルとされているが、イスラム系移民の高い失業率、貧困や差別への不満を背景に、近年暴動が各地で多発している。ストックホルム郊外のヒュースビー地区は、人口の85%がイスラム教徒の移民が占める地区である。そこで去年一週間にわたり大規模な暴動が起き、「寛容な移民政策」の裏の実態が波紋をよんだ。
現在スェーデンには、移民で構成する186のゲットー区域があるとされる。その中でも、55の区域は”no-go zones”と呼ばれ、その区域のギャングが統治している。この区域に入ると、スウェーデン人のバスの運転手、タクシー運転手、宅配配達人、郵便配達員、消防士、救急隊員などは攻撃されるため、警察の同伴が必要とされる。だが、救急車、消防車、警察車両などへの投石、破壊や放火が頻繁で激化しているため、no-go zones に入るには、軍同様の重装備が必要となった。11月には、スウェーデン警察は、最早55のno-go zones を警察の管理下に置くのは困難と発表、ことの深刻さが明らかとなった。
社会を変える移民の増加
スウェーデンの社会は驚くべきスピードで変化している。2004年から2014年の10年間で人口は900万人から約970万人と増加した。その内訳は、移民や移民の子供による人口増加が875,819人に対し、スウェーデン人(注)の人口は113,747人減少し、この傾向が続ければ、2049年までには人口の過半数をイスラム系が占めると予測されている。
(注)スウェーデン人両親を持つ国民
少子高齢化による人口問題を解消するために移民政策が唱えられているが、たとえ人口が増えても国家のアイデンテテイが希薄となれば新たな危機を意味する。スウェーデンの移民政策の結果をみれば社会秩序の崩壊につながる混乱は避けなければならないことは明らかだ。移住先の国の文化や習慣に敬意を持たず社会に溶け込むことを拒む移民たちを迎えることには多くのリスクが伴う。