ニューヨークにあるロックフェラーセンターのクリスマスツリーの設置、飾り付け、点灯はアメリカの一大イベントであり、ニューヨークの象徴である。近年日本でも、その点灯式の風景を放送するようになり、日本でもアメリカのクリスマスを代表する行事として広く知られるようになった。
ニューヨークに住んでいれば、クリスマスには必ず親に連れて行かれる場所である。そうして、親になれば、必ず子供を連れて行き、クリスマスを祝う伝統は次の世代へと伝えられるのである。
最初のクリスマスツリー
ロックフェラーセンターでクリスマスツリーを飾る伝統は82年前の世界恐慌時に遡る。最初のクリスマスツリーは、ロックフェラーセンター建設中に労働者たちが、仕事があることへの感謝として飾ったものである。労働者のほとんどは、ヨーロッパからの信仰の強いキリスト教移民(アイランド、ドイツ、イタリア)であった。
1931年、クリスマスを翌日に控えるクリスマスイブに給料が支払われた。1929年の株価大暴落から2年、失業率は約20%で、経済不況が深刻化している時に労働者たちは仕事があること、給料がもらえることに感謝をした。
クリスマスツリーは労働者たちにより運ばれ、飾り付けは自分たちで作った紙の飾り物、紐を通したクランベリーや小さな空き缶(光の反射でキラキラ光った)などで飾った。このクリスマスツリーには、労働者たちの感謝の気持ちと共に将来への希望の気持ちが込められたのである。
ニューヨーク復興のシンボル
世界恐慌の最中にロックフェラーセンターの建設は、個人による建設事業としては最大規模で、ニューヨークの復興事業でもあった。完成するまでの9年間、75,000人に職を与えただけでなく、ニューヨーク市民に希望を与えたのである。
正式なクリスマスツリーが毎年飾られるようになったのは建設開始から3年後の事である。その後クリスマスツリーは毎年より大きく(最初の木の6メートルに対し今では25から30メートル)、より華やかになっていくと共に、その人気は増し、ニューヨークの象徴となっていったのである。
ライトアアップされたクリスマスツリーをみる時に、当時の市民の希望の光であったことを思い出し、特別な日を祝うことができることに感謝の気持ちを持ちたいと思う。