Cynkテクノロジーズの波紋−米株式バブル崩壊への警告

July 23, 2014

 

 

 

 

 

 

 



 

 SEC(米証券取引委員会)は711日に、あるIT企業の株式取引を一時停止した。会社のフォーム10-Q(株式公開企業がSECへの提出が要求されている四半期財務報告書)によると同社は、成長前の発展段階にあるソーシャルメディア企業と説明している。だが、正気な人であれば、この会社に投資することはあり得ない。

 

 では、何が問題であったのか?Cynkテクノロジーズ(Cynk Technologies)の株価は1ヶ月で250倍以上跳ね上がり、時価総額が10億から約60億ドルに膨らんだ。しかしその財務報告書(下記)をみれば、理由は明白だ。

 

  流動資産                  0

  総資産                   0

  売上                    0

  営業利益                  0

  純負債     $      -11,275

  累積赤字    $ -1,583,827

  資本金         $  1,258,689

  従業員                    1人  

  販売商品                  0

 

といういわゆる実体のない会社である。最高経営責任者(CEO)であるザビエール・ロメロはたった一人の社員である。ホームページはあるが、会員は0。株価を上げるニュースもなければ、理由もない。財務情報がなければ、企業の分析もできない。株式市場が正常に機能していれば、このようなことは起きない。

 

 となると、ゼロ金利と金融緩和策が生んだ副作用の可能性が高い。既に株式がバブル状態にあるがゆえ、より高い利益を求めて、ファンダメンタルに基づかない投資ではないか。

 

 ところで株式投資にまつわる面白い話がある。ジョー・ケネディ(ジョン・F・ケネディの父)は、靴磨きの少年から、ある株を進められた。彼は株投資の知識がない少年までが株の話をしていることは、株式がバブル状態にあり、近い将来、暴落が起きると解釈した。そこで保有株を全部売却したのでケネデイ家は、1929年の大暴落の被害を受けず、逆に財産を増やしたのである。

 

 今の米株式市場をみれば、数々の有力指標はバブル状態を示している。しかし、指標が株価の反落の可能性を示唆する水準になると、投資家(個人投資家)は今回に限って、そのような法則は適応されないと思いたがる。プロの投資家(smart money と呼ばれる)は最早、利益を確定し、株式市場から撤退しているのに、である。最後までパーテイに残っている参加者の「根拠なき熱狂」によって暴落まで続くのである。今回のCynk騒動は、警告となれば、よいのだが。

 

Joseph Kennedy
Joseph Kennedy