加速する戦争のゲーム化

Aug. 18, 2014

 

 人類の歴史を現代人と同じ新人類と定義すれば46億年の地球の歴史の一瞬に過ぎない20万年程度である。戦争の起源はメソポタミアで平和な生活を送っていた農耕集団に対して、その日暮らしで食糧難に陥った狩猟集団が攻撃したこととされる。史実に残る戦争の歴史は古代エジプトのBC13世紀頃なので、戦争の歴史は人間の歴史と重なる。戦争の歴史的な記述は成書に譲り、ここでは最近の展開(ドローンが人間を肩代わりしたIT戦争)についてかきたい。

 

Westworldの世界

 IT戦争といってもロボット同士が戦うわけではない。ロボットが人間を標的とする戦争史のパラダイムシフトが目の前に迫っている。映画 "Westworld"では観客と決闘してロボットが必ず殺されるシナリオで「必勝カウボーイ」を体験できるテーマパーク"Westworld"のカウボーイロボットが反旗を翻す。


 この映画では強欲な経営者たちより、何故かユルブリンナー演じるロボット、ガンスリンガーに応援したくなる。マイケルクライトンの脚本で最初の監督作品であるこの映画は、彼らしい先見性を持った作品であった。知性を持ったロボットが人間に反抗する映画は他にも"2001年宇宙の旅""アイロボット"など数多いSF映画のジャンルを形成している。

 


ロボット化する現代の戦争

 ターボファンエンジンで巡航するミサイル、トマホークは目標の近くまでは、電波高度計から得た高度情報を事前に入力された地図と照合しながら、飛行経路に沿って誘導される。突入前の最終段階では、デジタル式情景照合装置(DSMAC)と呼ばれる、電子光学センサーにより地上をスキャンし、事前に登録された情景と比較しながら進路を修正する。


 これに対してウオールアイと呼ばれる空対地ミサイルでは滑空中に先端にあるテレビ・カメラが目標の映像を捉えるので、パイロットが反転してからでも、目標に精密誘導ができる。湾岸戦争で使われたウオールアイが激突まで撮影した弾頭テレビカメラの映像が記憶に新しい。

 


ドローンとは

 ドローンの話に戻る。本格的なドローン兵器の歴史は(無人飛行機を除けば)ナチスドイツが開発したV1という今で言う巡航ミサイル、 V2と呼ばれる弾道ロケットが最初である。その後、画像電子機器や通信機器、コンピュータなどIT技術の発達により、リアルタイムでの操縦と偵察映像表示、完全自動操縦などが可能となり、実戦に投入されることになった。


 ブーツオンザグラウンドといいつつも、ベトナム戦争で多数の死傷者を出して世論の支持を失った米国は、一方で犠牲を最小限にし相手を攻撃するためドローン攻撃を採用した。偵察だけが目的のグローバルホークに続いて、攻撃能力を持たせたプレデターが配備され、アフガニスタン、パキスタンでタリバン攻撃に使用されている。目標への誘導を映像に頼るため、結婚式を集会と間違えた誤爆事件が話題になった。

 

進むドローン開発

 ドローン機の開発は拡大している。ステルスドローン機は現在、米国が最も期待をかけている秘密兵器で、グライダー状のダークスター、空母から発進できる攻撃機ペガサスなど実験機の他、センチネルという偵察機がアフガニスタンで実戦配備されている。欧州や中国でもドローン機の開発が活発である。巡航ミサイルの提案者はキッシンジャー、開発プログラムを認可したのはカーター大統領であった。


 ミサイル総数の制限に対抗するためのパワーポリテイクスの生み出した、遠隔操縦攻撃というスタイルに沿って、ドローン機につながった。重要なことは遠隔操縦には精密な位置情報の入手と制御に最新のIT技術が使われている事だ。行き絶え絶えのIT産業は新たな活路を軍事にみいだした。システムのメンテナンスにも多くのIT技術者の雇用が必要である。

 

 米国内ではドローン機の操縦を担当する軍人"パイロット"に精神的な苦痛により精神障害につながることが問題となっている。画面上でコーヒー片手に殺戮して帰宅して家族と一緒に(お祈りして)夕食をとる、ことが苦痛だそうだ。


 しかし広島、長崎に航空から原爆を投下した国が、何をいまさら、と思ってしまう。戦争では職業人が民間人を守るのではなかったのか。民間人をPCゲームのようにステイックを握り、ピンポイントで誘導し死に追いやる。"Westworld"だったら、きっと遠隔操縦している場所に舞い戻って突っ込むのではないか。

 

Drone Survival Guide