Photo: Nachtwatcher
オーストリアのチロル州Telfsのインターアルペン・ホテルでビルダーバーグ会議が6 月11〜14日まで開催される。「陰のサミット」とも呼ばれているこの会議は、例年とは異なり、今年はG7首脳会議の後で開催される。
ビルダーバーグ会議2015
1954年にオランダのベルンハルト王配が創設、最初の会議がオランダのビルダーバーグ・ホテルで開催されたのが会議の名の由来である。毎年1回、世界で影響力を持つ政治家、多国籍企業、国際機関や金融機関の代表、ヨーロッパの王族や貴族など選ばれた120人が参加し、世界の政治経済、社会、環境、紛争などの多様な国際問題を議論する会議である。
完全非公開なため、会議は万全な警備が可能で、関係者以外が潜入できない遠隔地域にある場所が選ばれ、マスコミは完全にシャットアウトされる。
今年開催されるインターアルペン・ホテルは標高1,300メートルのチロリアン・アルプスにある。ホテルの立ち入り禁止区域が設定され、潜入者には、500ユーロの罰金または2週間の実刑が脅されることになっている。
30マイル(約 48キロ)の飛行禁止空域が設定され、通信妨害システムも導入、オーストリアの特殊部隊のコブラが警備の担当を実施することになっており、これまでとない厳重な警備体制で会議が行われる予定である。
会議参加者
会議の議長は日本でもよく知られているフランスの世界最大級の生命保険、損害保険、資産運用などの金融サービス企業を含むAXA(アクサ)グループの会長である。参加者リストは会議サイトで公表されている。
参加企業の中には、ロイヤル・ダッチ・シェル、グーグル、エアバス、シーメンズ、フィアット・クライスラー、ブラックロック、BP(ブリティッシュ・ペトロリアム)、アルコア、ロッシュと言った欧米の石油、航空、自動車、化学薬品、製薬、軍事武器、ITなどの多国籍企業の会長や CEOが参加する予定である。
金融機関にはゴールドマンサックス、ロイヤル・バンク・オブ・カナダ、HSBC, JP モルガン投資銀行、モルガンスタンリー、ドイツ銀行などが参加。
その他にはオーストリア大統領、オランダ、フィンランド、ベルギーの各国首相に加えて、オランダと英国の財務大臣、ECB(欧州中央銀行)役員が参加しヨーロッパにおける金融問題について議論が交わされると思われる。
大学からは金融の専門家、シンクタンク、コンサルタント会社、NATO事務総長などが参加。今年はアジアやBRICS諸国からは参加者はなく、欧米の参加者に限る。
注目点
今回参加者の中に、元国防高等研究企画局(DARPA)局長で現在グーグル重役のレギーナE.ドゥーガンとその他2名のグーグル社の役員が参加していることに注目を置くべきである。
レギーナE.ドゥーガンと言えば、タトゥー型RFIDマイクロチップの開発で世界を驚かせた人物である。世界中で生体認証の技術開発とその認証手段としての採用が検討されている今、今後グーグル社は生体認識の分野で大きな影響を及ぼす可能性が高い。全ての人間にマイクロチップを体に埋め込む日はそう遠くではないかもしれない。
もう一つの注目点は、キャシュレス化社会の実現の可能性である。世界中で急速にキャシュレス化が進んでおり、各国の中央銀行でさえキャシュレス化の利点を議論している。キャシュレス化の政策が導入と実現に関する方向性が示されると思われる。
その他に、ウクライナ問題、2016年のアメリカ大統領選、ギリシャの債務問題、TPPと世界の政治経済の動向に大きく影響を及ばす政策の方向性を決める会議となるであろう。このような限られた参加者、特に非公開な会議で有力な多国籍企業により世界の動向が左右されるのは各国国民が憂慮すべきことではないだろうか。
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