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現ローマ法王のフランシス1世は、18日にカトリック教の道徳や教えについての教法の立場を示す、カトリック教会の公文書である回勅を発表する予定であった。しかし、発表前にその内容が漏洩、イタリアの人気雑誌L’Espressoに発表された。
5月に開催されたバチカン主催の「環境サミット」では、地球温暖化問題は人間の活動がつくりだしたもので、気候変動に対処する行動をとることが人類の義務であるとの声明をだした。
今回漏洩された回勅では、ローマ法王は一歩踏み込んで、世界12億のカトリック信者に向けて、考え方や意識の革命がなければ地球における持続可能な発展はあり得ないこと、世界の大半が貧困にある中、一部の国々が世界の資源を所有し富が集中していることを変える必要性、地球温暖化に対処する行動は道徳的・宗教的義務であることなどを指摘している。
貧困と自然の崩壊の根源にあるのは、絶えず利益を追求することが正当化される資本主義や消費社会にあるとする。つまり、持続不可能な消費は人間の道徳と倫理の問題であるとしたのである。
バチカンが回勅を発表することで、地球温暖化に関する議論が大きく変わる可能性がある。地球温暖化問題をこれまで科学的、政治的議論から宗教的な議論にしたことの影響は大きいとみられる。
カトリック教会の役割と経済発展の道徳的責任を地球温暖化問題の議論の中心とすることは、カトリック教会の中でも反論がある。また、地球温暖化論が基づくデーターやその予測に対する疑問が科学界で増していることから、多くの科学者からの批判も上がっている。
バチカンで予定されている発表会では、ポスダム気象変動影響研究所( Postdam Institute for Climate Impact Reaserch )の創立者兼所長の Hans Joachim Schnellnhuber がプレゼンターの1人であることも注目が集まっている。Schnellnhuberは熱狂的な温暖化論者で、 地球全体の平均気温の上昇を2度未満に抑えるという目標を各国は設定することが不可欠、2度以上になれば地球上のほとんどの生命は絶滅するか深刻な被害を受けると「2度目標」を主張した学者である。
Schnellnhuberは地球温暖化問題を解決するには、地球憲法 (Earth Constitution )、グローバル議会 ( Global Council )と 地球法廷( Planetary Court )によって世界統一の政府がグローバル民主主義を実現することが理想的なシステムであると考えている。さらに、地球上の資源を持続可能にするには、地球の人口は10億人以下に限定する必要があると考えている。このような考えを持つ学者とキリスト教を結びつける理由は謎である。