繰り返される感染症対策の遅れ

June 22, 2015

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Photo: TIME 


 感染症にはさまざまな種類があり国立感染症研究所のホームページに簡易的な説明と国内での感染情報などの各種情報が記載されている。


 もっとも身近な感染症例はインフルエンザだが、毎年インフルエンザが猛威をふるうがそれでも予防・治療薬の開発には長い時間がかかり、それから臨床試験を経て我々が利用できるまでには相当の時間がかかっている。つまり感染原因のウイルスが発見されてもその治療法が確立するわけではない。


 感染症はウィルスによってもたらされる。しかしウィルスも進化しているため新種のウィルスによる、あまり知られていない感染症に関しては、MERS(中東呼吸器症候群)のように医師も病状がわからないことで、韓国のように感染者が拡大してしまう可能性が高くなる。


 鳥インフルエンザなどではパンデミックを引き起こさない様に、発見と同時に隔離して「閉じ込め」るための一連の対応が行われているように報道されている。しかし、これらは一般的に認識されたウイルスによる感染症だからで、新しいウイルスの場合は発見が遅れ、現場の対応がバラバラで、感染者が拡大することで社会的な混乱が引き起こされる。


Photo: ALJAZEERA 

 

 新しい感染症には薬がなく、既存の薬で症状が抑えられるのかもわからない。そこで感染者を隔離するのが拡大を防ぐ最大の防御になる。韓国で感染拡大が収束しないのは感染の疑いのある人たちの「閉じ込め」に対する意識度が低いと考えたくなる。本来なら出国を控えるべき隔離対象者が日本に入国しているという事実は理解しがたいはずだ。中国へへのMERS拡大も自粛せず出国を強行した一部の旅行客によるもの。

 

 エボラウィルスの時も、症状が出ていない感染者が感染しているという自覚がないため動き回ることで世界中に拡大してしまうことが心配されたが、隣国で起きた感染者の拡大で改めて、隔離の徹底と閉じ込めの厳守を考える必要があるのではないか。社会の意識が低いのは先進国として恥である。

 

 アメリカでエボラウィルスへの感染可能性のある人が、症状が出ていないことで個人の自由を理由に自宅待機を拒否したり、韓国でゴルフをしていたMERS感染者が強制的に自宅に戻されたりした。「個人の自由が優先される」のか、「感染拡大を防ぐことが優先される」のか政府は基準を明確にするべきではないだろうか。

 

 下のマップのようにMERSは中東に限定されない感染が広がり全世界の脅威となりつつある。しかし米国当局は米国内でMERS感染拡大の恐れはない、と言い切る。事実WHOは深刻に受け止め、韓国内では「閉じ込め」は成功とはいえない。当局者の感染症に対する受け止め方が一致していないことが問題の根底にありそうだ。

 


Photo: abc NEWS

 

 これから新たなウィルスによる感染症が出てくることは間違いない。如何に早く発見し予防していくか、医療機関を含めて社会の対応にもとめられている。また、最初は個人病院など街中の病院でみつかることが多い。そうした一般病院でも既存の病状なのか新種のウィルスによるものなのかを迅速に判断する必要がある。

 

 病院では常に新しい情報が取得できるよう政府による徹底したバックアップが必要となる。また、日本で最初に発症するようなウィルス性の感染症が出てくる可能性もある。迅速な対応を求められることとなるが、政府がその能力を備えるには日頃から危機意識を高め余裕のあるときにこそ準備を進めるべきだろう。