Photo: Defense Industry Daily
スエーデンのサーブ社は世界最高性能のステルス潜水艦を開発したと発表した。Kockums A26と呼ばれるこの潜水艦は全長約63mと小ぶりだが、完璧にステルスとなる”Ghost Mode”を備える他、水中でダイバーの乗り降りが可能としたことなどユニークな機能を持つ。
サーブ社といえば空軍用の戦闘機を生産する軍事部門の他、最近まで独特なフォルムで人気のあった自動車部門を持つことで知られる。同社は潜水艦の開発契約を海軍と結び、A26を開発してきた。
完璧なステルス機能がA26の特徴で、潜水艦としての仕様はスターリングエンジンを備え海中で隠密に18-45日間行動できることである。ドイツや日本でもスターリングエンジンを備えた潜水艦の開発が行われている。
“Ghost Mode”
ステルス機能にはまず潜水艦の流体力学的設計が重要である。乱流の立てる音波は敵に音波探知され易い。このため水に接触する表面に摩擦の少ないゴムで覆われている。これにより艦内の騒音も吸収され外部に出ていかないし、外部からの衝撃を吸収することもできる。
さらに連結されている区画の結合部分にはダンパーで連結されているためきしみなど音を発生しない。
動力は完全に密封されたスターリングエンジンとデイーゼルエンジンモジュールが使われる。配管にも曲率が大きいように工夫され流体の内壁の摩擦音の軽減に役立っている。
艦表面にはソナー反射を抑えるコーテイングが施されている他、ソナー反射面積を最小限にする設計となっている。水中での抵抗を低く抑える設計で自分でつくりだすノイズを最小限に抑えている。さらに電気的探査に対しては潜水艦が発生し水中に放つ電流ノイズを出さないための表面電位制御が行われる。潜水艦を探知する方法のひとつである磁気探知に対抗するために消磁システムを備える。
ステルス性能が求められる理由
かつてロシア海軍のアクラ級原子力潜水艦がメキシコ湾で隠密に行動したが米国海軍に発見されなかったことで、ステルス性が話題となり米国は対抗してヴァージニア級原子力潜水艦を建造した。現在では冷戦時の攻撃力に主眼を置いた設計よりステルス性という潜水艦本来の特徴に注目されている。
オーストラリア海軍が潜水艦を日本から購入する問題が話題を呼んでいる。スターリングエンジンは非大気依存推進(AIP)(注1)として日本を始めドイツでも開発が進められて来た。ドイツの212A型潜水艦、日本のそうりゅう型潜水艦である。
(注1)AIPはAir-independent Propulsionの略。空気を必要としない動力源としてスエーデンが実用化に先駆けたスターリング機関が代表的。下の図のようにシリンダーに閉じ込めたガスを外部から加熱、冷却する外燃機関で、小型潜水艦の動力源として実用化されている。日本は2004年にスターリング機関のそうりゅうを建造した。ドイツの212A潜水艦は2002年から就役されすでに4隻が配備されている。
ドイツの212Aの後継(216)、そうりゅう、A26にフランスの計画中の新型艦を加え、このクラスの競争が激しくなっている。冷戦は遠のいたが南シナ海への中国の進出やバルト海へのロシア海軍の脅威など、シーレーンを守るための潜水艦開発が活発になった。