水で発電するマグネシウム電池

June 16, 2015

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Photo: DTS blog

 

 リサイクル電池といえばリチウムイオン電池が頭に浮かぶほど出回っている。一方でより環境に優しい新型電池が注目されている。無公害材料でつくられ水を注いで発電するマグネシウム空気電池である。


 2050年に地球上のエネルギー需要は倍増するといわれているが、開発途上国の中には電力不足で、夜間の照明すら実現していない国々もあり、需要が増大しても格差が解消できる保証はどこにもない。



 マグネシウム電池は電解質の役割だが使用前は正極と負極は空間で隔てられていて、使用時に注水すると発電を開始する。今回製品化されたAqumo Candle(写真)では1.2-1.6Vの起電力を有し、3-5mAの電流容量を持つ。このため4本を使い20mAのLEDを336hr点灯することが可能である。


 災害時や僻地で夜間電力が期待できない場所での照明に便利である。災害時に携帯電話の充電に備える非常用マグネシウム空気電池も市販されている。



Photo: Mater. Horiz. 2014, 1, 196. 


 注水で発電するまで起電力を生じないこと、マグネシウムがなくなるまでは水を足すだけで、起電力が復活する特徴は非常用として安全に備蓄できるため重宝する。使い捨てでない二次電池への応用も考えられている。

 

 原理的にはマグネシウムはほぼ同じイオン半径のリチウムにくらべ電荷が2価であるため、電荷を運ぶイオンとしての能力が高い特徴がある。一方でしかし電荷が大きいので無機活物質構造に強く固定され中から抜け出にくいという問題点がある。その点で柔軟性に富む有機活物質なら、そのマグネシウムイオンを容易に挿入脱離できるとことに着目した高性能マグネシウム空気電池の開発も行われている。

 

 近い将来は電力不足で夜間照明を始め電力使用ができなかった開発途上国や災害地などで安定な非常電池となる日も近い。