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NPTが成果を出せないまま閉幕した。広島、長崎訪問への抵抗などの細かい問題は別にして、中東核武装化に反対する動きが成文化できなかった。中東にはイスラエルが含まれるが、この国の核武装化に関して欧米の責任が問われるからだ。
スウェーデンのストックホルム国際平和研究所の調べでは現在、アメリカ、ロシアはそれぞれ7,300個、8,000個の核弾頭を保有し、これらが93%を占める16,300個の核弾頭はゆるやかに減少しているものの、中国、インド、北朝鮮、パキスタンでは増大の傾向にある。
中東の核武装化が進めば抑止力という名目で石油マネーが核兵器の保有に使われ、NPTのシナリオが崩れ去ることになりかねない。ISなど正規軍以外の手に渡ることも予想しなくてはならない。
アメリカが突然、イランに歩み寄りイラン核兵器交渉の行方は6月を目前に緊張が高まっている。イラン西部のアラクに建設中の重水炉(注1)が核兵器への転用が可能なプルトニウムを供給できるとして、争点のひとつとなっている。
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よく知られているように核兵器への道はふたつ。高濃度濃縮ウランを0.72%含まれる同位体U235を兵器グレードまで、濃縮作業で製造するか、原子炉を使って核燃料廃棄物に含まれるプルトニウムを抽出するかだ。
(注1)重水炉
発電用原子炉の多くは軽水炉。これに対して減速材に重水を用いる原子炉をさす。重水は高価であるが減速材としての性能が優れるため、燃料に天然ウランを使用できるため、天然ウランを算出するカナダを中心に50基ほどが運転もしくは建設中である。プルトニウム生産効率が軽水炉より高いので核兵器を目的とするのに適している。
アラクの重水炉の稼働で核兵器がつくれるプルトニウムの量が蓄積されるのは12-18カ月かかるため、各国は使用済み核燃料の処分に注目している。
ストックホルム国際平和研究所はたとえ、使用済み核燃料がプルトニウムを抽出する再処理工場にまわされても、再処理過程では大気中に大量の核種が放出されるため、大気サンプリングで監視が可能としている。
アメリカが原爆をつくる際にテネシー州知事の反対で、オークリッジの敷地をハンフイールドに移転したが、ハンフイールドは核物質の周辺への汚染で住民が被爆した。
周辺の環境モニタリングを徹底すれば核兵器転用の証拠をつかむことはできるかもしれないが、その時では遅すぎるだろう。再処理工場周辺はハンフイールド、セラフイールドのような環境汚染にさらされる運命にある。6月の協議が近い。だが本当に犠牲を被るのはアラク周辺の住民である。