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マクドナルドはフェニックスに従業員が全てロボットのロボット店舗をオープンする。フライドポテトのサイズをロボットに聞かれるようになるかもしれない。
9年間で初めての利益後退の危機に立たされたマクドナルドはファストフード店で最初となるロボット店舗をオープンすることになった。このロボット店舗はアリゾナ州フェニックスに7月4日(建国祭)にオープンする。ロボット店員の監視のために少数の「人間チーム」が常駐する。「人間チーム」はロボットの動作、店の清掃状態、食料品のストックなどを確認する他、最重要業務であるロボットから集金する仕事がある。
店に来る客はロボット店員が人間の50倍という速さで動き回って、ハンバーガーやフライドポテトをサービスするのを目撃することになる。このパイロット店舗の営業成績が良ければ、やがて全米の店舗と世界中の店舗のロボット化が始まる。
ロボット店舗の店長、Peter Gibbons氏によれば、ロボットクルーはサンフランシスコ地区で6カ月間の「研修」を終えているという。ロボット従業員たちは仕事が早く間違えない上にタバコ休憩もとらないで、働くと満足のようだ。
マクドナルドの広報によればロボット化は従業員に時給15ドルの雇用費削減のため”McRobots”と呼ばれるロボット店舗の検討を数年間検討してきた結果だという。時給15ドルの縛りでも従業員の賃上げ要求が収まらないことに加えて、店員のミスによる非衛生さ、研修費用、怠慢さ、最近の異物混入事件、など人為的な因子による損失が大きく、ロボット化によってこれらを一挙に解決できると考えた末の決断であった。
しかし周辺住民の気持ちは複雑だ。52歳で失業中のTom Downeyによると、アメリカで失業して教育も、車もない自分のような失業者でも働くことができたハンバーガーショップ店員にすらなれなくなった、と寂しい心境を語った。
ロボット店員の採用で店員雇用費は削減どころか不要となるとあって、株式保有者は財務後退を覆す明るい材料ととらえている。2014年度に消失した配当は105ドル/株と予想されている。しかしアメリカの平均収入は販売不振、リストラ対策、閉店費用などで11%落ち込んでいる。マクドナルドロボット店舗だけで回復できる範囲の数字ではない。
日本でも寿司ロボットが開発されているし、回転寿司店でiPadやタッチスクリーンで寿司を注文するのはもはや驚く光景ではない。回転寿司でなくとも鋭い眼差しの店のご主人の寿司のシャリが、どうも柔らかいとか、酢飯がちょっと甘かったかな、などといつもの味や握りと違うと感じたことはないだろうか。
寿司ロボットがいつも同じ品質で目の前で握ってくれるとしたら、敷居の高い寿司屋にいるより気が楽で、新鮮な握りを美味しくいただけるのではないか、などと考えてしまうが、こちらはそんな顧客の立場など考えていない。要するに店員を雇用するよりコストがかからないから、という企業側の論理によるものだ。
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ロボットの反乱が描かれた映画「アイロボット」のロボットの寂しそうな澄んだ目には人間の愚かさが映し出されている。マクドナルドの営業不振を店員の雇用費に押し付けるのは間違っている。マクドナルドというひとつの時代が終わったことを認識できないならば、ロボットがたとえ真面目に働いたとしても顧客にも見放されるだろう。