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米国にある合衆国輸出入銀行への批判は高まっており、銀行の廃止の議論が議会で論争となっている。6月末までに、事業継続が再認可されるかが議会で決まる。この状況の中、存続に向けてのロビー活動を強化したのは中小企業ではなく、米国の大手上場企業である。
合衆国輸出入銀行
米国輸出に比較的小さな役割を果たしている合衆国輸出入銀行(U.S. Export-Import Bank)は、米国外の米国製品の買い手に対して貸付けを行うことを業務とする政府系輸出信用機関である。この銀行は常に政治的な議論の的となっている。
米国輸出入銀行を不必要とする議論には、企業助成機関として輸出企業と癒着し様々な温床となっているとの批判がある。またこの制度を活用しているのは、中小企業ではなく、ボーイング、キャタピラー、GE、ゼロックス、ダウ・ケミカル、ファイザーといったフォーチュン500社である。
中小輸出企業が国際市場で競合企業より優位に輸出できることを推進する制度として支持されてきた。だが、その実態は資本主義とは言えないものである。全米上位500社の企業の輸出を伸ばすために国の助成金(納税金)が買い手に貸し付けの資金として利用されているのである。つまり、製品購入資金のファイナンスの一部として活用されているのである。
2014年には米国輸出入銀行の融資の70%の資金はキャタピラー社の顧客向けであった。ボーイング社も頻繁に売り上げを伸ばすため、輸出入銀行を活用していることから、「ボーイング銀行」とも呼ばれている。2014年には81億ドルの融資を自社の開発用資金と顧客向けの融資に当てている。輸出入銀行の融資がなければ、外国競合企業との間、特にエアバス社に対する優位性は得られなかったとされる。
もう一つの問題点は、米国輸出入銀行の融資で一番得をした国が、15億ドルもの融資を受けたロシアである。ウクライナ問題で敵対関係にあり、経済制裁を実施しているロシアの他にも、米国の同盟国とは言えないヴェネズエラ、パキスタンと中国である。アメリカのダブルスタンダードとも言える。
この米国輸出入銀行の事業継続を推進するのが「大統領輸出評議会」である。メンバーに含まれているのがボーイング、ゼロックス、フォード、ウォルト・ディズニー、UPS、ファイザー、ダウ・ケミカル、ユナイテッドなどの米国大企業であり、米国輸出入銀行の恩恵をこれまで受けてきた企業でもある。
ボーイング社は、事業継続が再認可されず閉鎖に追い込まれた場合、海外への生産拠点移転も実さないと議会に圧力をかけている。企業が国を脅迫する時代である。国民の税金を使って大企業は自社の優位性を獲得、維持している。アメリカは資本主義国家ではなく、まさに大企業が政治家、国家を左右する「コーポレイト・アメリカ」である。