テスラ社の家庭用バッテリーシステム

May 3, 2015

 

 太陽電池パネルで日中は発電し一部を消費するとして、残りは売電、と考える人が多い。しかしそれは止めて家庭用大容量蓄電システムにまわして、夜間の電力に使用すれば、電力会社と契約は解除できるかも知れない。


 10kW以上の発電パネルを整備したとすると、テスラ社が発売するリチウムイオンバッテリーパック"Power Wall"はそれにぴったりかも知れない。スペースX社やテスラモータース社を率いるイーロンマスクは、「テスラエナジー」と称するバッテリーシステムを販売する。その中の中心がリビングの壁にかけることも可能なデザインのPower Wallである。


 テスラ社のEVはリチウムイオンバッテリーで航続距離が日産リーフの倍の500km以上で、高性能スポーツカー並みの運動性能と美しいデザインで人気が高い。リチウムイオンバッテリー(注)事業の拡大をパナソニックとともに目指しているが、家庭用バッテリーシステムの需要を見越しての販売となった。


(注)テスラ社EVの航続距離が長い理由

 パナソニックがEV用に開発したリチウムイオンバッッテリーは、ニッケル系正極材料と特殊な絶縁性耐熱層技術を採用し、高容量化と耐久性の両立を実現している。また、ノートPCなどで実績のある18650サイズ(直径 18mm、高さ65mm)の電池を大量に積むテスラ社の高級EVセダン(モデルS)に搭載され500kmを越える航続距離で他社を圧倒している。


 上の写真は家庭用EV充電システム。壁掛けのPower Wallはこれより薄型でインテリアとして通用するデザインである。テスラ社は充電システムとEVのバッテリー制御のノウハウを活用するとともに、パナソニックと共同で立ち上げる大規模工場のバッテチーを有効に生かす道を模索したのだろう。


 液晶工場の過剰供給に泣いたSHARPと異なり、過剰供給リスクをニーズをつくりだすことで避けた。イーロンマスクは大胆だが、細かいリスクマネージメントにも抜け目がない。


 ニーズがないならつくりだす、そうした意欲は見習うべきだろう。



 これまでは太陽電池で発電したあと、「バッテリーバンク」と呼ばれる大容量のバッテリーシステムへ蓄電することが必要であった。Power Wallは10kWh、7kWhのモデルが、それぞれ$3,500、$3,000、日本円にして42万円、36万円と比較的低価格に位置する。

 

 国産のリチウムイオンバッテリーはインバーターは付いているものの、1kWhで50万円、10kWh対応には10台の並列接続が必要で、1桁以上高くつくし、第一リビングに10台並べるのは不可能だ。

 

 デザイン、コストとも競争力は高いことは確かだが、テスラ社はオプションでテスラ社EVとPower Wallをつなぐケーブルも$750で販売する。一足早く日産リーフが夜間電力に車載バッテリーを使う提案をしているが、最大の問題は朝、車のバッテリーが空になっていて走れない可能性があることである。

 

 テスラ社はそこで考えた。Power WallへEVをつなげば太陽電池からEVへ充電できる。つまり燃費ゼロでEVを走らせることが可能になる。EVの普及にかかせない存在になりそうだ。